いろいろ

□変人彼氏
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おかしなことを笑顔で言う5題
坂田が敬語。





俺には彼氏がいる。
まずその時点でツッコミどころなのだが、その彼氏はもちろん彼氏というからには男で、そして弁護士だ。

そして


「あ、高杉くん。ここにいましたか。」


とんでもなく変人でもある。





俺とそいつの出会いは大学でだった。
なんとなく選択した科目でチャイムとともに入ってきたのがその男、坂田銀時だった。
彼はその大学で非常勤講師をしており担当教科は刑法総論、刑法各論の本職は有能な弁護士の男だった。

なんだかんだでいろいろあって付き合うこととなったのだが、付き合ってから解る面というのがあるわけで。



「・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」


今、銀時はベンチに座っている俺の隣に腰をかけ、自販機で買ったコーヒーを飲みながら前を歩く女子高生をじっと目で追っていた。

否、女子高生ではなく女子高生がはいているミニスカートから覗く足を凝視していた。

因みに、今はデート中である。


・・・・・・。

確かに男ならばミニスカートをはいている女子高生の足が目の前にあるならば見ることもあるだろう。
でも、ガン見というものはどうなのだろうか。
しかも、隣に恋人がいる状況で。



「・・・・・・。」

「・・・おい、銀時」

「なんでしょうか?」


なんでしょうか?じゃねぇよ。
とりあえず女子高生から目を離せ!こっち向け!俺の目を見て話せ!

しばらくして女子高生が道を曲がり視界から消え、やっと銀時がこっちを向いた。

「で、どうしたんですか?」

「どうしたんですか?じゃねぇよ。お前今俺が隣にいるのに女の足ガン見してたよな。チラっと見るんじゃなくてガン見だったよな」

「え?ああ、ハイ。」

表情の変化とか一切なしに言われた。
悪びれもしねぇのか。
すがすがしすぎて余計に腹立つな。


「お前なァ、仮にもその、デ、デート中にそういう・・・」

「ミニスカートは好きですよ、脚が見えますし。」

「・・・・・・。」

「興奮しますね、もちろんそういう意味で。」


笑顔でそんなこと言うんじゃねぇぇぇぇ!

「ああ、ホント、もうなんなんだよお前は!」

ガタンと大きい音を立て手にもっていた炭酸飲料が入っていた缶を地面に叩きつけながら立ち上がる。
銀時は其れを拾い自販機の隣にあるゴミ箱に捨てて「不法投棄は駄目ですよ?」なんて笑ってみせやがった。

かっこい、じゃなくて!

「お前なァ!チラっとならまだ解るが、ガン見ってなんだガン見って!しかもそれを悪びれもせずに笑顔で自分の欲望をよりによってその、こ、恋人に言うってどういうことだ!」

「恋人という単語を話すときにどもる貴方はとても可愛らしいと思います。」

「銀時ッ・・・・・・!
じゃなくて!」

一瞬ときめきかけた俺を見て銀時がケラケラと笑う。なんかすごいからかわれている気がしてならない。

俺は本気で話しているのに。

こいつはいつもそうだ。
人を不安にさせるだけさせてからかって遊ぶ。人の気持ちなんか、どれだけ不安なのかわかっているのかわかってないのか、そんな飄々とした態度で。

「・・・、う、」

目頭が熱くなってきた。
喉の奥が熱い。
嫌だ。こんなことで泣きたくなんかないのに。


「高杉君」

「・・・・・・えっ、」

ふいに、銀時の右手が俺の頬に触れた。
そのまま撫でられ銀時と目線を合わさせられた。銀時のほうがいくらか身長があるのでしぜんとそれは上を向く行為となる。

「御願いです。高杉君」

銀時の紅い瞳がじっと俺の目をみる。
その表情に心臓がどきどきと大きく音を立て始めた。

「な、なに」

「そんなに泣かないでください、理性が保てなくなる。」

「・・・え?」

「ですから泣かないでください。美人は泣いても美しいので、いえ、泣くからこそ美しいのでそんな顔を見せられると理性が保てなくなります。」

「・・・ば、」

「ハイ?」

「ばっかじゃねぇの!」

涙なんか盛大にひっこんだわ!
つうかなんだその台詞!

「てめ、真面目な顔してなにを言うかと思ったら、ホント、ああ、もう、恥ずかしい野郎だな!」

「本当のことを言ったまでです。それと落ち着いてください。コーヒーがこぼれます。」

「うるせぇぇぇ!」

銀八が俺の頬から手を離しながら少し拗ねたようすでそんなことをのたまった。つーかなんで両手で触らないのかと思ってたら左手にコーヒー持ってたのかよ!置けよ!ベンチに!

「てめ、馬鹿、人が、どれだけ不安になったと思って、も、馬鹿、馬鹿野郎!」

「高杉君、」

「馬鹿、ばか、テメェなんか、ン―――ッ!」



いきなり上を向かされキスをされた。
そのままぬるりと銀時の舌が入ってきて俺の口内を犯す。腰なんかも撫でられて完全に夜のそれだ。間違っても外でするようなキスじゃない。ていうか何故にこのタイミング。

ぐいぐい胸を押すけど逆にもっと強く抱き寄せられ酸素不足などから思考が追いつかなくなる。

やっと離されたときにはもう抵抗する気力も失っていた。



「・・・はぁ、は、てめ、は、なにしやがる。」

「・・・ああ、すいません。誘っているように見えたので、つい。」




つい。じゃねぇぇぇぇ!


「そんなことより。高杉君。今貴方は顔が赤く涙目というとても扇情的な姿でコンクリートにへたり込んでいるのですが。洋服が汚れてしまいますよ?」

あっさりと話の方向転換をするな。

「・・・るせぇ、誰の所為だと思ってやがる。」

「ああ、腰が抜けてしまったのですか。・・・そんなに私のキスがよかったのですか?」

「・・・黙れ」

「否定をしないということは肯定ととっても宜しいですか?」

宜しくねェ!
そして人が動けないのをいいことにじりじりと顔を近づけてくるな!

「高杉君」

「・・・なん、だよ」

「好きなんです貴方のことが。だから、いいですよね?」

胸に手を置かれた。
そのままその手が下半身に下りていく。

いいわけねぇだろォォォォォ!


「ちょ、お前、馬鹿か!ここ外だぞ!?」

「丁度ベンチの後ろにいい感じに人から見えなくなるような場所がありますね」

「いやいやいや!アホかお前は!」

「青姦って、いい響きですよね!」

「お前それでも弁護士かぁぁぁ!」

「高杉、愛してる」

「敬語はどうした!ていうか、どこさわって、・・・アッ――――」







おわり


坂田が敬語で誰っていう。
高杉の頭の血管が心配です。

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