いろいろ

□ミイラとりがミry
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エイプリールフール平日設定。本来ならば春休み期間中のはずなんだけど、なんか偶然その日は学校にくる日だった的な感じで同級生銀高。









どうしようどうしよう。
今俺は人生最大の難関にぶちあたっている。
聞いてくれるの?ありがとう。
あのさ、今日はエイプリールフールじゃん?だから俺も嘘を考えて、それを恋人に言ってみたわけよ。
どんな嘘付いたかって?
・・・うん、まぁ、いい嘘ではないんだけど・・・。
うーん・・・。・・・・・・。
あー、もう!わかった言うよ!
「別れる」って言ったの!
やめてよその目!銀さん泣いちゃうよ!?
・・・・・・。
あー、うん、ごめん。
あー、あ、それでどうなったか?
・・・ちょ、なんでペンでなにか書いてるの?なんで目輝いてんの?
・・・まぁいいか。
それでさ、俺的には泣きじゃくったりとか、まぁ、怒ったりとかしてほしかったわけよ。「別れたくない」とか言ってね。
でもあいつ・・・高杉の奴なんつったと思う?
無表情で、そうか、って言ったんだよ。
そして去ってったんだよ。
泣きもせず、怒りもせず。
それで俺は―、って、ちょ、ペンガリガリ五月蝿い!
さっきからなに書いてるの?
て、うわ、オイ、涎!涎出てるよ!
気にしないで下さいって、気にするから!
・・・大丈夫なの?
・・・・・・。じゃあ、話進めるけど、それで俺はどうしたらいいと思う?
・・・・・・うん。やっぱお前もそう思う。
やっぱり高杉のところ言って誤解といてきたほうがいいよな。
・・・うん。わかった。高杉のところ行ってくるわ!
相談に乗ってくれてありがと!
じゃな!














教室からでた俺は廊下は走るなと張り紙が張ってある校舎を全力疾走で走り回り高杉を探した。
今は放課後だけど、さっき下駄箱を確認したら靴があったのでまだ校舎内にいるはずだ。
それなら大人しく下駄箱の前で待っていたほうがいいのかもしれないが、いつくるかわからない奴をずっと待っていられるほど俺は広い心は持っていない。
時々すれ違う人に高杉の居場所を聞きまわり走り回る。
廊下を歩いていた新八に聞いたときは、
「ああ、高杉さんなら1年棟をまた子さんと一緒に歩いてましたよ」
といい、1年棟廊下で惰眠をむさぼっていた神楽に聞いたら(本当にコイツは廊下で寝ていた)
「晋助なら購買の自販機でジュース買ってたアル」
といい、自販機の前で『ミラクル☆マヨネーズジュース』を買っていた土方に聞いたところ(ドン引きした。そんな代物を作った会社にも、買っている土方にも)
「高杉なら屋上に行ったぞ」
と言っていた。

そんなわけで俺は今現在全力疾走で屋上へと続く階段を駆け上がっていた。
ふらふらと野良猫のように校舎を闊歩する高杉の後を全力疾走で追いかける俺。
あいつはいつもいつも人の数歩先を気だるげな顔で歩いていく。
人の心配なんかどこ吹く風で、ふわりふわりと野良猫のように。


バンッと大きな音を立て屋上のドアを開けると、ぶわりと生ぬるい風が舞い込んできた。
どこからかとんできた桜の花びらが髪に付くのを頭をふってとっぱらい、屋上で談笑していた3人組を見つけた。

「・・・いた」

その中に高杉もいて、汗だくで屋上に入ってきた俺を見て一瞬驚いた顔をしたあと、その目を猫のように細めた。

「どうしたんだ?銀時ィ?」

間延びした声で、挑発するように高杉は俺を見る。高杉の名前をよび謝ろうとして口を開こうとしたその瞬間、高杉はまた声をだす。

「お前がなんのために此処まで来たかは知らねェが、お前はついさっき俺に分かれる、と言ったよな?」

「それは――」

嘘で、という言葉は高杉の次の言葉により喉の奥で消されてしまった。

「いい機会だろ。お前がなんで別れると言ったのかは知らねェし、知りたいとも思わねェが、俺もお前と縁を切りたいと思っていたところだしな」

「・・・え?」

「お前のほかに、好きな奴が出来たんだ」


高杉のその言葉は俺の心臓に真っ黒な刃となりつき刺さった。
脳はその言葉の処理に追われ、高杉と一緒にいた沖田と神威のヒュウ、とならされた口笛にも気がつかなかった。

ほんの、ちょっとした、嘘のはずだったんだ。
高杉を苛めてみたくて、あわよくば泣き顔とかも見てみたくて、だから、エイプリールフールだから、ただの、嘘だったはずなのに。


「そういうわけだから、お前とはもう縁を切る。じゃあな。銀時」

高杉は、瞳を俺に向けない。
目を合わせてくれない。
大好きな深い森のような翠色が俺を見てくれない。

そんなのはいやだ。
そんなのは許されない。

「・・・。」

「銀時?」

「・・・嫌だ。」

「・・・は?」

嫌だ嫌だ嫌だ。
高杉と別れるなんて考えられない。
そんなのは、駄目だ。
俺が駄目になってしまう。
悪いが俺はよく少女漫画にでてくるヒロインに片思いをして結ばれなかったヒーローのライバル役のように、ヒロインの幸せを願って身をひくなんてことはできない。
俺が隣にいない高杉の幸せなんて望めねェ。

「嫌だ。そんなのは、ゆるさねェ」

たとえ高杉な泣こうとも、絶対俺は離さない。

だから、

「お前と俺は一生一緒にいないと、駄目だ。」

「・・・銀時」

高杉が近づいてくる。

わかってる、こんな男、かっこ悪ィ。
だけど、だから

「銀時」

高杉が俺の瞳を見る。
大好きな緑色がきらりと輝いた。



そして高杉が口を開く。













「嘘だよバーカ」












え?









「お前、エイプリールフールだから嘘ついたんだろ?お前の嘘はバレバレなんだよ。目が泳ぐからな。だから、そっちがその気なら、こっちもそうしてやろうと思ってな」









え?









「どうだった?俺の演技。完璧だったろ?」









え、




「ええええええええええええええ!?」



つまり、
つまり、
つまりッ!



「俺には新しい好きな奴なんか出来てねェよ。アホ」


「ええ、えー、えー・・・」

ヘタリ、と屋上の外の空気であっためられたコンクリートにへたり込む。


つまり、俺は高杉を騙すつもりで見事騙されたわけだ。

やられた。
してやられた。

この狐に見事にしてやられてしまった。


沖田と神威がニヨニヨしながらいまだ座り込んでる俺に歩を進めてくる。


「お兄さん、見事にやられたね。面白かったよ。」

「ミイラとりがミイラに、とはこのことでさァ」


駄目だ。
安心で返す言葉もないよ。





おわり。

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