いろいろ
□help me! 誰か俺をこのアホどもから救ってください。
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俺は女が好きだ。
だからといって,女好きでいろんな女をとっかえひっかえっていうわけではなくて、普通にただ男ではなく女のほうが好きだ、という意味だ。理由?そんなこと聞かれても困る。だってこれは遺伝子に組み込まれていることなのだから。でも同性愛とかに偏見があるわけではない。好きなら勝手にすればいい。ただし、俺の居ない場所で。いや、居てもいい。俺が居てもいいから俺を巻き込むな。それさえしてくれれば、目の前でなにしてくれようが構わない。そうだ、構わないんだ。だから。
「頼むから俺の居ないところでやってくれ!」
俺の悲痛な叫びは,虚しくも隣の男の声で打ちのめされてしまった。
「えー、晋ちゃんが居なくてどうすればいいんだよ」
俺の右にぴったりとくっつきながら座り、俺と同じ制服を着たくるくる銀髪頭第一号の男、銀時が俺の右腕にしがみつきながら俺の顔を覗きこむ。普通に女が好きな異性愛者な俺にとって、今のこの状況はよろしくない。非常によろしくない。ああ、やめろ触るな、腕に引っ付くな、その腕をなにやら卑猥な手つきでなでるな、手の甲にキスするなァァァァ!
ちゅっと軽いリップ音を鳴らし俺の手の甲にキスをしやがった銀時は、俺の左でコーヒーを飲んでいる男を見て勝ち誇ったようにふふんと笑った。それを見た俺の左に居るくるくる銀髪頭第二号の銀八はいつもどおりの安定の無表情でコーヒーをテーブルにカタンと置くと、その口を開いた。
「やめろ銀時。高杉がキモ死にしちゃうだろうが。」
あっさりと言い放たれた実の兄の暴言に言葉を失っている銀時の手から銀八は俺の先ほど銀時にキスをされたほうの手をとり、その手を自分のほうへ寄せてポケットから出したシックな色のハンカチで俺の手の甲を拭いた。
「大丈夫か?高杉。」
「え?あ、いや、その・・・」
銀八の瞳にじっと見つめられなんと言葉を言おうか迷っている俺の後ろで、銀時が銀八に文句を言う為にだろう。音を立てて立ち上がった。
「な、ふざけんなよ銀兄!なんでさも当然のように、高杉が俺にキスされると、その、えーと」
前半は勢いよく舌が回っていたのだが、後半怒りから単語が出てこなくなりその勢いが失速した銀時に銀八はわざとらしくはぁ、と大きく溜息をついた。
「なんだ、老化で話したい単語が出てこなくなったのか?だからあれほど漫画じゃなくて小説も読めといっていただろうが。だから国語赤点取るんだよ。大体なんであんな簡単な問題もわからないんだ?ああ、アホだからか。いつも高杉のこと考えてるもんな。どうでもいいけどお前の部屋のベットの周りに転がってる丸めたティッシュ速く片付けろよ。アレの所為で部屋が臭くなるんだ。わかったか」
「えっ」
銀八の長文を頭の中で分析していると、ある言葉が引っかかった。
俺のことをいつも考えている。そしてベット脇の丸めたティッシュ。それからある答えに到達し俺がドンびくと、銀時が顔を赤くして違うよ高杉!と悲痛な叫び声を上げた。
「いや、違うくないけど、ああ、もう!なんで言っちゃうんだよ銀兄!」
「俺はなにも言ってねぇだろ。ただお前の部屋がイカ臭いってだけだ。」
「うわぁぁぁっ!」
その場で叫び声をあげうずくまる銀時がだんだんかわいそうになってくるほど、銀八はすごかった。嫌味が。もはやこれを嫌味といっていいのか。ただの言葉を遠まわしに使って実の弟を本気で殺しにかかっているようにしか見えない。流石国語教師、言葉遊びはお手のものだ。
そんな絶賛舌絶好調中の銀八の様子をチラリと見ると、うずくまっている銀時を見て普段の銀八からは考えられないような程すごくいい笑顔をしていた。あ、今心なしか口が「ばかめ」と動いた気がする。
銀八を観察していると、俺の視線に気づき、銀八はニコリと笑う。
「そういえば高杉、この間本屋でお前が好きな作家の新刊発見したんだ。今日二人で買いに行かないか?」
先ほどの悪い顔を笑顔にかえ、うずくまる銀時をよそにカラリと話を変えた銀八は俺にそんなことを言ってきた。
銀時のことは気にするな、寧ろいないことにしろと暗に言っているのが聞こえた。逆らうといろいろ面倒くさいので従うことにした。
「ん、そうか。じゃあ行こうかな。どこの本屋だ?」
「ん、ちょっと遠い所だから俺の原チャリに乗っていこうよ。高杉にヘルメットやるからさ」
「教師がそんなことしていいのかよ?」
「俺は教師とかいう立場うんぬん以前に、お前のことが好きな一人の男だからね」
「ぎんぱ・・・「ストォォォォォップ!」
急に今まで空気だった銀時が起き上がり俺と銀八の間に割り込む。そしてひしっと俺に抱きついてきた。
「晋ちゃんは俺のなんだから、口説くなこのハゲ!」
そのままぎゅーっと銀八から守るように抱きしめてくる銀時の後ろで、何かが切れるような音がした。
「誰がハゲじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
3秒後、部屋には銀八の怒声が響き渡り、俺はなぜか銀時に手を引かれ無理矢理鬼の形相で追ってくる銀八から逃げることとなっていた。
おわり
凄い前に日記でもらったネタを書いてみました。
銀八先生はこの後銀時を気がすむまでフルボッコし、高杉に俺はフサフサだからね!と泣きついたそうです(伝言)