いろいろ

□そして君だけが生き残る
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前の続き、というか、坂田視点、というか。坂田死ぬので注意。





ずっと好きだった高杉と話せてから早半年。
季節はもうあの時とは正反対の夏になってしまった。部活帰りの蒸し暑い夏下旬の日。生き残った蝉が必死に鳴いていた。道にはもう亡骸となった蝉がいくつかコロコロしており、それを踏まないように歩く。

ふと、半年前を思い出した。あの時は少々強引にしすぎた気もするが、高杉と間接キス+一緒のブランケットに包まることが出来たので結果オーライだろう。高杉も最初は戸惑っていたが、最後にはあったかそうにしてたし。


「この間総悟が・・・」


隣を歩く土方の口からは、またもや今年の一年生、剣道部の後輩の悪口がでる。正直、もう聞き飽きたし、なんだかんだで土方がその後輩を好いていることも知っているので、話は聞き流して高杉との思い出に浸った。

そいうえば、あの日以来視線を感じて振り向くとその相手が高杉だという事が間々ある。
視線はすぐ逸らされるし、話し掛けようにも内容がないのでうやむやに名って終わってしまうが、コレはもしかするのかもしれない。


「・・・竹刀をいきなり俺の頭に振ってきて、俺が寸でのところで交わして怒鳴ると、悪びれもせずに手がすべりやしたって言ったんだぜ。ありえなくねぇか?」

「っるせぇなテメェは。どうせもうすぐ引退なんだからどうだっていいだろうが」


そういうと土方はそうだけどな・・・、とごもごも喋った。なんなんだこいつ。どうせ引退したくねぇんだろ。沖田君と喋る機会がなくなるから。畜生、うらやましいこった。高杉も剣道部だったらよかったのに。好きな奴と話したいから部活引退したくねぇなんて思い俺もしてみてぇ。いや、土方の場合好いてるの意味がちげぇかもしれねぇけど。いや、同じなのか?どっちにしろ、うらやましい。


これは、思い切ってまた俺からアプローチをかけるべきなのだろうか。そうなんだろうな。きっと今のままじゃ高杉も声をかけてくれないだろうし、なんの進展もしないだろう。

でもなぁ、高杉って、どこにいるかわからねェんだよな。元々あまり学校にこないみたいだし、俺も推薦をねらっているので毎日屋上にもいけない。半年前のことだって、具合悪いと嘘ついて保健室行くフリして屋上行ったらたまたま高杉がいただけだし。あの時は餌に喰らいつく鯉のように高杉に猛アタックしたけど。

まぁ、こんなところでうじうじ悩んでても高杉と進展なんてするわけないし、とりあえず明日高杉が学校に来てたら話しかけてみよう。内容なんてどうだっていい。いい雰囲気になって、高校を卒業するまでには告白だってしてみたい。

ああ、明日が楽しみだ。
高杉、来るといいなぁ。


刹那。


「オイッ!銀時後ろッ!」

土方の焦った声。

振り向く俺。


黒いワゴン車。



え、と思うまもなく俺の体は宙に浮く。

なにが起こったのかも、ワカラナイ。
ワゴン車が電柱にぶつかるのが、視界の端に見えた。


瞬間、強い衝撃が俺の体を襲う。

ひゅ、と喉が鳴った。


なんだ、コレ。


起き上がろうとするにも、指一本動かない。
体に力が入らない。どくどくどく、と、心臓にあわせて、地面が赤く染まっていく。


「ぎッ、銀時、お前、えっ、ま、待ってろ、今、救急車」

慌てたような土方の声が、遠い。

救急車、ああ、俺、もしかして、轢かれちゃったワケ?

だから、こんなに、体重いのかぁ。

はは、は。
ちょっと、ヤバイ、かも。


「ひ、じか、た・・・」

「・・・! バ、バカ、喋るな!血が・・・」

ひゅーひゅー鳴る喉を叱責して、土方に話しかける。俺は、絶対高杉に伝えたいことがあって、本当は、自分で言いたかったけど。銀さん無理そうなんで。本格的にやばいんで。土方君、友達の頼み、聞いてください。

「た、かす、ぎ、に・・・」

「な、なんだよ、聞こえねェよ!」

土方の顔が赤い。さっきまで馬鹿みたいに青かった空も、今は真っ赤だった。

「高杉晋助、に、好きだったって・・・伝えて」

「・・・え、」

土方の顔が赤で埋め尽くされてみえなくなった。
ああ、自分で言いたかったなぁ。

畜生、畜生、畜生。


意識が薄れる。


悔しい。悔しい。虚しい。


どんどんどんどん、落ちてくかんじ。


高杉、高杉、高杉。


体が、急にふわりと軽くなった。




ずっと、大好きだった。





そして君だけが生き残る


返事、聞きたかったなぁ。






おわり
たまにはこんな銀高も。

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