小説

□『世界を守った救世主は世界で一番不幸になりました』
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ぐさり、とそいつの胸にその剣を突き刺した。

そいつは抵抗もせず目を閉じただ眠るように剣の冷たい温度に身を任せているようだった。

赤い着物がさらに赤く染まっていった。


俺の目からは何も出なかった。




















そいつが死んでみんな喜びの声を上げた。

そいつは悪役だった。

テロリストだった。

世界に必要の無い人間だった。

俺の大事なものを壊そうとした悪だった。

だからそいつを俺は殺した。

俺は世界を救った救世主になった。





なんて短い俺の人生の話。


そいつの墓は立てられなかった。

そいつは死んでもなお皆から嫌われ続けた。




なんて悲しい彼の人生の話。





そいつの最後の姿が瞼に焼き付いてはなれない。




翠の目。

赤い着物。

包帯。

それと、


赤い赤い赤い赤い

真っ赤な血。




そいつの体に剣を刺した。

心臓に深く深く突き刺した。

達成感を軽く超越する大きな消失感。






そいつの言葉が、表情が、忘れられない。


















『・・・殺せよ。』

『・・・・・・。』

『やっと、これで開放される。』




























お前は解放された。



肩書きから。

人から。

記憶から。

世界から。










お前の最後に望んだ。

殺せ、という願い事。

無事叶え、俺は世界の救世主になりました。










でも。







刀に、もう触れないんだよな。







俺と話すことも、もう出来ないんだな。








昔の笑顔、もう二度と見れないんだよ。












「・・・ッ、」









ボロボロと。

昔化け物と恐れられた赤い瞳から生暖かい液体がでてきた。


コイツを一番目に綺麗といった奴は誰だった?




松陽先生?






『お前の目、俺は好きだぜ?』








違う。






『俺は高杉だ。よろしくな、銀髪テンパ』











高杉だった。



高杉が、高杉の顔が、声が、俺の頭に木霊する。


なんだ、これ。

苦しくて、死にそうで、痛いし辛いし。


誰も居ないし。


また、孤独になった。



俺は・・・・・・。






























ずっと、好きだったんだ。


『世界を守った救世主は世界で一番不幸になりました』



それでも俺は無様にお前は居ない世界で生き続ける。






おわり


お母さーん!どうしよう!?小説書けないよ!?
ふんわりした銀高を目指してコレだよ!?

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