小説

□笑顔と爪痕と甘い嘘
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注意 どうやら管理人はどっかから電波をもらってきて甘い話が書けなくなったようです。キャラ粉砕注意。














「お前らってさ、仲よかったっけ?」

「あ?」

「へ?」

いつものようにくだらない事で銀時と喧嘩してたらとなりでそれを見ていた土方がなにやら不思議そうな顔でそんなことを聞いてきた。

その予想外な言葉に俺は銀時の頭を叩こうとしていた腕を止めて土方に向き直る。

「は?お前この状況みて仲いいって思うのかよ?だったら眼科行けよ。」

この状況とは俺が銀時の脳天を参考書の角で叩こうとして、銀時は俺に蹴りをかまそうとしたまま止まっている今まさにこの状況のことを指す。
喧嘩するほど仲がいいとは言うが俺とこいつだけは違う。本当に俺達は心から嫌いあっているのだ。たぶん。少なくとも俺は嫌いだ。
でも土方は腕を組み納得のいかない様子で首をうーんと捻る。
俺は腕を下ろし、銀時は足を下ろして土方に向き直った。

「いや、だってさ。高杉お前昨日の日曜なにしてた?」

土方が不満だとも言いたげに腕を組み替える。

「は?」

「いいから答えろって。」

なんで今昨日の話が出てくるのだ。
そうつっかかろうとしたのだが土方の目がやけに真剣だったので怪しがりながら昨日のことを思い出す。

「・・・昨日は部屋で一日中寝てたな。もったいない事した。」

土曜に部活での大会があってそれでくたくたになって帰ってきたので日曜起きたらもう月が昇っていた。
本当にもったいないことをした。

でもそんな俺の答えに土方はやはり納得しなかったようだ。
首を捻りながら銀時にも問う。

「そうか・・・。じゃあ銀時は?」

「え?俺?俺は家でゲームしてた。それとエロ本読んでた。それと・・・」

銀時が指を一本一本折りながら昨日の記憶をさかのぼっていく。
その子供っぽい仕草とは裏腹に答えにはなんか変なのが混ざっていた。
なんだエロ本て。

「外出しなかったか?」

土方が続けて聞く。
なにがそんなに気になるんだかは解らないが目が真剣だ。

「外出?してねーよ。」

「そうか・・・。」

銀時の答えにも俺の答えにも土方は納得がいかないらしい。
しきりに首をひねっておかしーなとかぶつぶつ呟いている。

「おい、なんなんだよお前。」

耐え切れなくなって参考書で銀時の頭を一発叩きながら俺は土方に聞く。
銀時の悲鳴が聞こえたが俺も土方も無視だ。
角で叩かなかっただけ感謝しろ。

「いや、あんな見事な銀髪テンパと黒茶色の猫ッ毛がお前ら以外にいるとはな。・・・いや、実は昨日俺が雑貨店に入ったときお前らにそっくりの奴ら二人の後姿見てな。んでほんと仲よさそうに雑貨店でて向こうの喫茶店に入っていくんだよ。・・・でもお前らが家にいたんなら人違いだったんだな。丁度身長も同じくらいだったんだけど。」

土方が身振り手振りを加えながら話していく。人違いと言いながらも土方の首は怪しんだまま正常に戻ってない。

「・・・ふーん。ドッペルゲンガーって奴かな?世界には似た奴が3人いるっていうじゃん?」

銀時が心底興味なさそうな無表情で土方にそう言った。
銀時と同じ考えなのは悔しいが俺も同じくそう思った。
銀髪にはひっかかるが染めればなんとかなる時代だ。探せばテンパの銀髪なんているだろう。

「まぁな・・・。そうだよな。考えてみればお前らがんなに仲いいワケねぇもんな。」

そこでやっと土方が納得したように首を正常に戻し、腕組みをやめた。

そこでやっとその話は打ち切られ俺達は他の話題へとうつっていった。














土方十四郎はその日、切れたマヨネーズを買う為に外へと出かけた。
肌寒い空気にぶるりと身を震わせ、自販機で缶コーヒーを買った。
ガコン、と缶コーヒーが自販機から出され、おつりの30円を財布の中に突っ込んだ土方はぬるいコーヒーで手を暖めながらスーパーへと歩いていった。

その道のりでの出来事だった。

「アレ?」

よく見知った顔が二つ、向こうの道から仲良く歩いてきたのだ。
一人は左目に眼帯をしていてもう一人は銀髪テンパのよく顔の整った二人だ。

「あいつら・・・」

銀時と高杉だ。

土方は心の中でそう驚いた。
驚くのも無理はない。彼らはいつも暇さえあれば喧嘩をしているのだ。
それが今は仲よさそうに。まるで恋人のように二人で歩いてくる。
土方は咄嗟に近くの路地裏に隠れた。
なぜ隠れたのかは分からないが、頭の中でそう警報がなったのだ。

向こうは土方には気がつかない様子でさっきまで土方が歩いていた道に近づいてくる。
そこで、二人の会話が微かに聞こえてきた。


「銀時、今日はこのキーホルダー買ってくれてありがとな。鞄につけるぞ。」

「いや、別にいいよ。それ前晋助が欲しいって言ってたやつだろ?それにそこまで高くないし。」

「よく覚えてたな。・・・高いとか安いとかじゃなくて銀時に貰ったこと自体が嬉しいんだよ。それに――・・・」


そこで二人の会話は聞こえなくなる。
土方は今の会話を冷静に分析した。もう冷たくなったコーヒーを無意識に握り締める。

(今の高杉の声・・・随分嬉しそうだった。あの会話の流れからすると高杉が銀時にキーホルダー買って貰ったんだよな?安いとはいえ金がない銀時が毎日喧嘩している高杉にそんなことするか?それに銀時が高杉のこと晋助って・・・。前欲しいって言っていたやつってことはあの二人は前にも一緒に出かけた事があるのか・・・?)

(だとしたら前俺がみたやつは見間違いではなかった?
でもあいつらは何らかの理由でそれを隠している?)

土方の心臓がなぜか早鐘をうち、口角が自然と上に上がった。
今、土方は新しい玩具を発見した子供のような気持ちになっていた。

そこで土方は慌ててなにかを思い出したように携帯電話を取り出す。そして二人が通り過ぎていった道にひょこりと顔をだし携帯を構えた。

 ピロリン                
土方の携帯が電子音をならし役目を終える。

携帯電話の画面には幸せそうに微笑む銀時と高杉が銀時に買ってもらったであろうキーホルダーを持ち楽しそうに笑っていた。














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