ブック(主に連載系)

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現代銀→銀時 白夜叉→白夜叉
現代高→高杉 総督→晋助



「ちょっ、高杉、お前どけてくんない?いくらオメーがチビだからって筋肉はそれなりにあんだから重い。つーか太った?」

重なった二人の下じぎになってる白夜叉を少し大人びさせたような男が、上に乗っかってる包帯の派手な着物の男に苛立ったように言う。
なかなか辛辣な言葉だ。と、どこか他人事のように晋助は考えた。

「チビじゃねぇ平均だ。大体テメーのほうが太っただろ。糖尿でメタボとは最悪だな。近いうち不能になるぞ?」

そう言い返した包帯男は自分で言っていて面白くなったのかクックッと笑った。晋助の前で晋助を守るように立っている白夜叉が、なぜか大げさに肩をはねさせた。だがそんな晋助と白夜叉などには目もくれず、白夜叉似の男は包帯の男を無理矢理どかせ立ち上がると、無理矢理押された為ころりと転がった包帯の男に言い返した。

「怖いこと予言すんじゃねぇよ。言っとくけど俺が不能になって困んのお前だかんね」

「俺は別に困らねェよ。オメェが不能になったら腹抱えて笑ってやらァ」

「よし決めたあとでヒンヒン言わせてやる」

その不毛な言葉の応酬は、晋助と白夜叉の耳には半分も入ってこなかった。それもそのはず、いきなり現れた男二人はなんと自分達とそっくりな声で話し始め、しかもその二人が自分達にそっくりとあれば、驚くのも無理はない。ただし、白夜叉似の男のほうは白夜叉よりも周りを取り囲む狂気がなく、対照的に晋助似の包帯の男のほうは、周りを取り囲む狂気が常軌を逸しており(その狂気の中には悲しさも垣間見えた)一見すると似ているとは言い難かったが。

「銀時、アレ、どう思う?」

混乱していた晋助と白夜叉であったが、先に落ち着いたのは晋助のほうであった。いまだ放心している白夜叉に、喧嘩を始めた自分達そっくりの男二人の感想を求める。晋助の言葉に現実に引き戻された白夜叉は、晋助の言葉に混乱しながらも返答する。

「俺、前ドッペルゲンガーとか辰馬に教えてもらったんだよな。確か、出会ったら死ぬ奴・・・は!高杉!俺どうしよう!死、ししししし!」

「落ち着け馬鹿!」

くだらない恐怖に陥ってしまった白夜叉(彼はこうみえて大の幽霊嫌いだった)を宥めるため大声をだした晋助に、やっと二人にそっくりの男も喧嘩をやめる。一瞬静かになった倉庫に響いたのは、白夜叉似の男の声であった。

「うっわーそうそうコレコレ!俺の純情な天使!」

男は無表情から急に破顔一笑し、そのいきなりの変化に驚く白夜叉を尻目に、なんと無防備だった晋助に抱きついたのだ。
当然急に男に抱きつかれた晋助は驚き、可哀想に悲鳴を上げる。

「ひぎゃッ!?」

「やだー!晋ちゃんかーわーうぃーうぃー!」

「アホじゃねェの?」

包帯の男が興味なさげに晋助に抱きついている白夜叉似の男にはき捨てた。その言葉を男は「黙れクソビッチ」とこれまた酷い言葉で一蹴すると、再び晋助を抱きしめた。

「あー、ちっちぇー、そっか、まだガキだから筋肉とかつきにくいもんなー。なんか、やわらけー・・・」

柔らかい口調で言葉をつなぐ白夜叉似の男に抱きしめられながら晋助は、混乱しながらもある仮定を頭の中に浮かべていた。その仮定とは、この今まさに晋助に抱きついている男の声、年齢(ざっとみて25、6といったところ)気配(多少の違いはあるが)などから導きだされた非現実的な仮定であった。

「・・・オイ、もしかして、お前」

その仮定を口にするべく、晋助が自分に抱きついてる男に話しかける。男は晋助を抱きしめてる力を弱め、ん?と返事をした。いや、正確にはするはずだった。

「高杉に触るなこの野郎!」

ごす、と鈍い音がしたかと思うと、次には怒声が続いた。白夜叉が、自分の思い人に抱きつく不届き者の頭をグーで殴ったのだ。なので男の返事は「ん?」ではなく「いったー!現役の俺のパンチいったー!」となってしまった。あわてて晋助から離れた男だったが、なおも白夜叉はそんな彼のことを殴ろうと拳を作る。

「ちょ、やめろってホント、マジでいてーから・・・」

「うるせェ。大体テメーらなんだ?賊か?残念ながらここには武器しかねェよ。いや、満足な武器もねェよ。わかったらさっさと死にやがれ」

「え!? そこは普通『わかったらさっさと去りやがれ』とかじゃないの!? そんな物騒なの聞いたことねぇよ」

汗をかきながら手を無意味にわたわたと振る男を殴ろうとする白夜叉を、晋助が慌てて止める。因みに、包帯の男は興味なさげに懐から出した煙管をふかしていた。

「や、やめとけ銀時!多分そいつら、悪い奴ではねぇ、よ、多分」

「ああ!?いきなり人に抱きつく奴のどこが悪い奴じゃねーんだよ!?」

「いや、テメェは抱きつかれてねぇだろ」

ぎろりと鋭い目線を向けた白夜叉に、男からツッコミが入る。それによりより一層目線が鋭くなった白夜叉に、これまでなにも行動をおこさず煙管をふかしていた包帯の男が白夜叉を見つめ、少し顔を紅くし、ほう、と息をついた。

「・・・白夜叉ぁ、」

その恋する女子(おなご)のような甘い声に、白夜叉に殴られかかっている男が鋭く反応した。因みに白夜叉は晋助に後ろから男を殴らないよう羽交い絞めにされており、その甘い声に気づく事はなかったが(そして晋助も気づく事はなかった)。晋助に後ろから抱きつかれていて(羽交い絞めにされていて?)恥ずかしいやらなんやらで身動きが取れない白夜叉をいいことに、白夜叉似の男が、包帯の男に抗議の声を上げる。

「オイ、高杉テメェコノヤロー、なんだその恋する女みてぇな目は」

「なんだよ俺みてぇなクソビッチはほおっておけや。俺は白夜叉に・・・」

「白夜叉は俺だから。寧ろお前だけの白夜叉だから」

「てめーみてーな腑抜けたヤローが白夜叉なんて死んでもいやだ」

「いーかげんにしろよォォ!『お前だけの白夜叉』って言うのちょっと恥ずかしかったんだかんなコノヤロー!」

ぎゃいぎゃいと再び喧嘩を始めた双方の言葉に、晋助はある引っかかりを覚えた。

(・・・まさか、いや、だが、でもこの二人の風貌、俺達にそっくり、だけど・・・、いや、悩んでても仕方ない、迷ったら聞け。)

「あの、さっきいった『白夜叉は俺』ってどういうことだ? 白夜叉はコイツだろ? ・・・俺の予想が間違ってなければ、もしかしてお前達・・・」

顔を紅くしている白夜叉を指差しながら晋助が信じられないような顔でつかみ合いを始めた二人に問いかける。そんな晋助の顔をきょとりと見た白夜叉似の男は、「あれ?言ってなかったっけ?」と些か間抜けな声をだした。そしてポリ、と頭を一つ掻くと、白夜叉、晋助双方を驚かせる言葉が返ってきた。

「俺達、未来からきたお前らなんだけど」

「・・・は?」

目をそろって丸くした晋助と白夜叉に、そうさせた張本人の男は少し笑って楽しそうに言葉をつなぐ。

「いや、なんつーか、ねぇ?」

「・・・???」

「坂本の馬鹿からさ、なんだっけ、過去に戻れるクスリ?だか貰ってきたんだよね。」

「・・・過去に戻れる?」

「そーそー。だから俺は未来のそいつで、このくそビッ・・・包帯男が未来の晋ちゃんってわけ」

いやー、薬一つで過去に戻れるなんてほんと便利な時代だよねー。激まずだったけど。あれどういう成分なのかな。脳になんらかの影響をあたえるとかそんなんなのかな。
ケラケラと笑いながら白夜叉似の男、晋助達からみたら未来の銀時は独り言のように呟く。そしてそんな銀時を見つめる晋助は、呆けたように一人立ち尽くしていた。
一方白夜叉は、未来の自分などには目もくれず、未来の晋助、高杉をじっと見つめていた。正確には、その左目に巻かれた痛々しい包帯を。そんな白夜叉の目線に気づいた高杉が、白夜叉に妖艶に微笑みかける。ドクリ、と白夜叉の心臓が大きく振動した。晋助にそっくりな人が、いやらしい顔でまるで誘ってるように笑ったのだ。片思い中の少年にとっては、下半身に悪い。

そんな二人を尻目に、晋助は世話しなく両目を銀時のつま先から頭のてっぺんまで上下運動させていた。お互い未来の自分には興味ないらしい。

「銀時って、こんなに背伸びるのか!?」

「あれ、ツッコむとこはそこなの?でも可愛いからよし」

「普通俺の左目どうしたんだーとかそういうのじゃねぇのかよ」

晋助の天然ボケに高杉が呆れながら言った言葉に、白夜叉が過剰に反応して両肩をはねさせた。だがしかし、当の本人の晋助はというと、「戦場に出ていて怪我をするのは当たり前だろ。両目潰れたやつだっているぜ?」と涼しい顔だ。

「まぁ、そうなんだけどね。基準が最低すぎるよね・・・」

「・・・?」

「だめだ、分かってないや。」

銀時が苦笑しながらも続ける。

「でもこうしてこの時代に来た俺達だけど、いつになったら帰れるかわからないんだよね。もしかしたら明日かもしれないし、何年も先かもしれない」

「・・・え」

計画性なくて悪いな。申し訳なさそうに項垂れる銀時に、晋助が戸惑う。

「いや、別に、そんな」

日本人気質なのかなんなのか、謝られると強く出られない晋助に、銀時が項垂れながらも口角を上げたことは高杉しか知らない。

「だから、それまで居候するから、よろしくな。晋ちゃん」

「は!?え、い、居候!?」

驚きでまたもや目を丸くし、いや、それは・・・、と断ろうとする晋助に、高杉が若干かぶせ気味に言う。

「・・・はぁ、またあの不味い飯か・・・」

「お前からこっちにくるって言ったんでしょうか!銀さんは被害者だかんね?」

なんか、これはこのまま流されて居候させてしまう気がする・・・。
晋助は、一人そんな予感を感じていた。

「よろしくな?白夜叉殿」

高杉が笑う。

「えッ!?あ、えっと、あ、ああ」

白夜叉が赤面する。どうやら彼は高杉の笑顔に弱い(いろんな意味で)らしい。

「晋ちゃんも俺のことは気軽に銀さんとかって呼んでくれていいよ。うっはやべぇ晋ちゃんに銀さんとか呼ばれたら俺勃つかも」

「え?なに?いまなんつった?」

「・・・少女マンガのヒロインですかコノヤロー!」

脱力した銀時を、高杉が嗜めた。

「お前は死ねばいいと思う」

「なんだとコノヤロー!」


また喧嘩をはじめた銀時と高杉に白夜叉と晋助は、はぁ、と二人同時に溜息をついたのだった。




つづく

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