ブック(主に連載系)

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二人が喧嘩しだしたのを、白夜叉と晋助が静かに神妙な顔付きで見守る。晋助は白夜叉との関係が未来でも変わっていないのに少々安堵し、白夜叉は晋助との関係が変わっていないのに少し悲しみを覚えた。

(未来でも喧嘩ばっかなのかよ、俺達)
(いつになったら、こいつに思いを伝えられるのかな・・・)

実は銀時と高杉はとっくの昔に思いを伝え合い、今はあんなことやこんなこと、そんなことまでした仲で、それを伺わせるような台詞を先ほど吐きまくっていたのだが、白夜叉と晋助の耳には留まらなかったらしい。動揺していて耳に入らなかったというほうが正しいか。

白夜叉が溜息をついたそのとき、不意にそれまで静かだった倉庫の扉の向こうから、ドダダダダ、と大きな足音が聞こえてきた。その足音に銀時と高杉は喧嘩をやめ、白夜叉、晋助とともに足音の聞こえてきた方角を見る。その足音はだんだん大きくなってこちらに近づいてきているようであり、その足音が一番大きくなると一寸の沈黙のあと、大々的に倉庫のドアが引かれた。スパァン、と気持ちのいい音が4人のいる倉庫に響く。

「銀時、高杉ッ!無事か!?」

その声の主は長い髪の毛をぼさぼさに振り乱し(その殆どが寝癖だが)額に少し汗をかき自分の愛刀を握り締めそこに立っていた。ご存知、ヅラという愛称で呼ばれる桂小太郎である。桂は晋助と白夜叉の姿を確かめると、安心したように語りだした。

「鬼兵隊の者に起こされ高杉の悲鳴が聞こえたと聞き入れ・・・」

「あ、ヅラ」

「ヅラじゃないかつ・・・!?」

銀時のだるそうな声にすぐさま反応した桂だがしかし、その黒い瞳をカッと見開くと震える指を銀時に当て、唇をパクパクと動かした。

「ぎ、銀時と高杉が一人、二人・・・」

「おい、ヅラ?」

「三人、四人、ヅラじゃない、かつ、ら」

そこまで言うと、桂は急にばったりと床に倒れ付した。晋助が驚いて、桂に近づく。

「・・・寝てる」

「あー、羊数える要領で寝ちまったんだな、多分。つーかこいつの寝顔怖いんだよな。目ぇとじろや」

めんどくさそうにそう吐き捨てた銀時の言うとおり、桂は目を開けたままz-z-と寝息を立てている。

「・・・布団に運ぶか?」

晋助が問う。

「いんや、このまま置いていこーぜ」

銀時の言葉はなかなか酷い言葉だったが、誰も反対する者がいないまま桂は一晩倉庫で眠ることになった。











ひとまず多分とても心配してるであろう鬼兵隊やほかの仲間達に現状を説明したいと晋助が言い、4人は仲間達の下へ向かった。

鬼兵隊は晋助の無事に安堵し、おいおいと泣いていた。因みに高杉も昔の仲間を思い出し、うっすらと眼球に水膜が張った。白夜叉は辰馬に背中をばしばしと叩かれ、「無事じゃったかー、金時ー」と大笑いされていた。得に銀時はなにもすることがなく、ただぼーっとその場に突っ立っていた。

晋助と白夜叉が仲間達に銀時と高杉のことを説明し、この二人が未来に戻るまでの間ここに留まることなどを話した。仲間達は勿論半信半疑だったが、白夜叉が仲間達の疑惑の目線を押し切り晋助、高杉、銀時を自室へと連れて行った。残された仲間達は、高杉の変わりようや、白夜叉が二人もいることについて議論を続けていた。これはそんな彼らの会話である。

「高杉さん、変わりすぎじゃねぇ?なにあの包帯」
「おー、なんか、怖くなってたっつーか、なんか、その、エロかったよな、雰囲気が」
「ばっか、お前、此処に白夜叉が居たら殺されてるぞ?」
「おっとあぶねぇあぶねぇ。つーか白夜叉も二人いるって・・・。余計高杉さんに話しかけづれぇじゃねぇか」
「・・・そうだな」

彼らの溜息が、夜の空気に溶けた。









つづく
ちょっと短いけど次

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