BL短編

□銀(+万事屋)/銀魂
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俺は昔、攘夷志士だった。
つっても端くれだから、そんな大層なモンじゃねぇ。

その頃はよく喧嘩をした。
なんの意味もねぇ、ただ殴るだけ。
そんなのも俺は楽しいと思ってたんだ。


ある日の事だった。
まぁ、所謂雑魚に喧嘩を売られたわけだ。
弱そーな奴だったから、適当にあしらってやろうとした。
だが、そいつはアイツら…ヅラ達をよえーとか抜かして来やがる。

カッとなって殴ったよ、もちろん。
その頃の俺は、ガキだったからな。
そしたら、あの雑魚が仲間呼んできやがって。
俺は強ぇから、負けなかった。
けど、ひでー傷で動けなかったんだ。

その時、アイツらが迎えに来てくれた。
急いで走って来て…
不覚にも、そこが『俺の居場所』だと思っちまったんだ。


でもよ、結局俺の居場所はなくなっちまった。




何年も経ち、大人になってしまった俺は、ババァに頼んで万事屋を建てた。

それからメガネとチャイナと犬が来たが、まだ数ヶ月ほど。
アイツらには悪いが、まだ大切だとは思えなかった。


とある日。
いちご牛乳を買うために外にでた。
本当はあの場所に慣れないからかもしれない。
自分に詮索を入れるなんて、俺ももう終わりなのかもな。
なんて湿気のせいでいつもより元気なテンパを掻きながら思った。

「オイ、テンパの兄ちゃん。」
路地裏から声がしたかと思うと、声の主に引っ張られた。
こいつ雑魚っぽいな。
「てめーのとこのチャイナのガキ、なんなんだよ。いきなり殴ってきやがって。」
「すんませんねー。うちのヤツが。」
俺が神楽の知り合いだと分かって絡んできたのだろう。
「犬もうるせーし。あのメガネのガキもなんかあんじゃねーのか?あン?」
「すんませんねー。うちのヤツがー。」
めんどくせぇ。
「ふざけてんのか、テメェ。」
「すんませんねー。うちのヤツがー。」
ふざけてるにきまってんだろ。
しばらく同じような会話をつづけてやった。
そしたら雑魚が、ため息をついてこういった。

「どうせ、チャイナ達もてめぇみたいなふざけたクズみたいなやつなんだろ。さっさと歌舞伎町から消えろよ。邪魔なんだよ。」


その後のことは断片的にしか覚えてない。
ムカついて殴ったら仲間を呼ばれ、木刀を持ってきてねぇから、素手で喧嘩した。
気がつけば路地裏には、倒れている雑魚共と、血まみれの俺がいた。

ヤツらはこんな俺を見て、怯えるか、嫌うか。
どっちにしろ、引かれるだろう。
そう思うと心の端っこが少し痛む。
(オイオイ、こんなん銀さんらしくねーだろ。)
そう思うほど痛くなる。
(くそったれが。)


「いたいた、銀さーん!」
俺を見つけた新八たちが、俺にかけよる。
「探しましたよ。イチゴ牛乳買いに行ったまま帰ってこないから。」
「銀ちゃん、お腹すいたネ。かえろーよ。」
「わん!(飯)」
そういって手を、血まみれの汚ねぇ俺に手を差し伸べてきた。
「は?」
「だから、帰るって言ったじゃないですか。」
「…オメェはよ。誰に手を伸ばしてんのか。」
「テンパ頭の人。」
「ちゃらんぽらんプー太郎ネ。」
「ワン!(糖尿病寸前のダメ男)」 コイツらはバカだ。
俺のことなんてこれっぽっちもわかっちゃいねぇ。

「銀さんは銀さんでしょう。バカ言ってないで帰りますよ。」
俺の右手を引っ張る新八。
「そうネ。銀ちゃんは銀ちゃんヨ。偽物だったら許さないアル。」
俺の左手を引っ張る神楽。
「ワン!(銀さん、帰ろ。)」
俺に頬ずりする定春。
「お前ら…」
そして、ガキみたいな笑い顔。



本当は大切に思えなかったわけじゃねぇ。
思うことが怖かった。
前みたいに消えてくことが。
だがな、今分かった。
こいつらは、俺の大切なものだと。
こいつらに、気づかされた。



「しゃーねーな。帰るか。」
ふらふらする足を支えてもらい、家路につく。



今度はぜってぇ、守りきってやる。
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