BL短編
□高桂/銀魂
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歌舞伎町のとある通り。
そこでは、例のごとく追いかけっこが始まる。
「桂〜!待てコラァ!」
「ふ、待てと言われ待つ奴がどこにおる?」
前者が鬼の副長。
後者が狂乱の貴公子。
「ち、逃げ足の早い奴め。総悟、あれを用意しろ。」
「わかりやした。」
そこで、やはりいつも通りバズーカを出す。
「撃てぇ!」
「死ねぇぇえ!!ひじ…桂ぁぁぁあ!!」
[ドーン]
平和な町に、火が上がる。
「総悟!アブねぇだろ!」
「ち、ヤれなかったか。」
「なぁ?総悟。俺の目を見ろや。」
「どーこいっちまったんでィ。桂の野郎は。」
「おい、てめぇ。俺の話聞いてんのかぁぁあ!!」
―――歌舞伎町。とある路地。
桂はなんとか爆撃を避け、近くの路地に入った。
向こうではサイレンの音と同時に、声が聞こえる。
「桂はどこへ行った!」
「探せ!」
「俺のこと狙っただろ!?」
「向こうの方へ行ったみたいだ!」
「自意識過剰すぎまさァ。」
だが、こんな音もどんどんと遠ざかっていく。
「逃げきれたか…。」
胸をなでおろし、地面に座り込む。
(そういえば、エリザベスはうまく逃げ切れただろうか…)
こんな事を1人で考えていた時だった。
「おい。」
上から声が降り注ぐ。
ぱっと、声をした方を見ると、そこにはいるはずのない男が立っていた。
「た、高杉!?」
「よぉ、久しぶりじゃねぇか。ヅラ。」
「ヅラじゃない、桂だ。」
片目の男。
そして昔の戦友が桂を見下ろしている。
「貴様、どうしてここへ?」
「てめぇら、前言ってなかったか?会ったらブッた斬るってな?今日は、ちょっくら斬られにきたんだ。」
「…フン。悪趣味な奴だな。悪いが俺は今回相手をしない。いろいろあるからな、銀時とでもやっておけ。」
そう言って立ち上がった瞬間、
「―――痛っ!」
足に激痛が走り、思わずしゃがみ込んでしまう。
踝辺りをよく見てみると、大きな傷があった。
桂はすぐに思いついた。
これは、さっき沖田がバズーカを撃ったときに出来たモノだと。
実際、被害には合ってないが、ガラスの破片が何かで、足を切ったのだと。
「…クソっ…」
「ククッ、これでお前も万事休すだな。」
最悪だ、と思った。
高杉と2人。しかも今の状況では圧倒的に高杉が優位である。
そんな中、高杉が喋り始める。
「それにしても、お前さんは女々しくなったなァ。」
「…黙れ。」
「昔から、細い体躯に長い髪。」
「黙れ。」
「今じゃ、長い髪にも艶がでてきて、その上この程度の怪我で歩けない。」
「黙れ!」
相変わらず、何を考えているか分からない顔で、話を進めてくる。
ある意味、【恐怖】の感情が桂の中を渦巻いた。
「折角褒めてやってんだぞ、喜べ。」
「気色悪い。それに、そんな事上辺のお世辞だろう?」
一応、自分のプライドもあり、【ほめ言葉】と言ったものの、こんな物ただの【侮辱】としか受け取れない。
「お世辞、ねぇ。」
意味あり気にそう言うと、高杉は桂と目線を合わせる為にしゃがみ込む。
もちろん桂は目をそらした。
「なんの、つもりだ?」
恐る恐る聞いてみるが返事は返ってこない。
だが、返事と言わんばかりに、顎を勢いよく掴まれ、目線が合う位置に固定される。
「離せ!」
「ヅラぁ。俺はな、本気で言ってんだ。」
「そんなのどうでもいい!だから、」
「どうでもいい、だと?」
「あぁ、そうだ、だから―――。」
離せ。と言う前に、声が出なくなっていた。
いや、正確に言えば口を何かで抑えられていた。
何か―――とは温かく、柔らかい。手などとは全く違う不思議な感触。
桂は、それが【高杉の唇】と気づくのは口が離された後だった。
「な、なななな、な、なんのつもりだ!」
急に顔を真っ赤にし暴れ出す桂。
暴れ出す前に、高杉は一歩離れた場所に移動していた。
「その反応、そしてよく喋る。お前、ホントは女なんじゃねぇか?」
「お、俺は男だ!て、てていうか人の話を聞け!!」
混乱状態に陥った桂を、オモシロそうに右目でみていた。
「まぁ、手負いのヤツを襲うなんて卑怯な事しねぇよ。そうだなぁ…足を早く治して俺の前に現れろ。そん時は沢山…おっと、救世主が来たみたいだぞ。」
高杉が口を噤むと、向こうから同士の声が聞こえる。
「それじゃ、またな。」
「ていうか、人の話っ!聞け!この悪趣味変態馬鹿野郎…」
桂が言い終わると、高杉は何処かへ行ってしまった。
(つ、次会ったとき、絶っっっ対斬るっ!!!////)
→あとがき