BL短編

□古キョン/涼宮ハルヒの憂鬱
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「何をしてらっしゃるんですか?」
「おぁっ!」



急に後ろから聞こえた声に、思わず奇声をあげてしまう。
結局、チョコも手に持ったままになってしまった。


「それ、どうされたんですか?」
「こ、これか?…その…クラスの女子からもら、」
「嘘ですね。」


俺が必死に考えた言い訳も虚しく、古泉はチョコに手を伸ばす。


「貴方が作ったんでしょ?」
「…。」
「貰っていいですか?」
「ダメだ。」


ダメに決まってるじゃないか。
こんな失敗作、古泉に渡せる訳がない。
それに…お前には…


「どうして…ですか?」
「どうしても…」


女子から貰ったチョコがあるだろ!
と、言いたかったが、俺がそんな女々しい事言えるわけない。
目線を一瞬チョコの山に移し、その後古泉を見る。


「はぁ。…貴方は何か勘違いをしていませんか?」
「…は?」
「今、チョコの山見たでしょ?」
「――っ!」


やば、見られてたんだな。
古泉の観察力ならこの位気づくか…


「どうして見ていたんですか?」
「…、黙秘権。」
「何故チョコをくれないんですか?」
「も、黙秘権。」
「そうですか…仕方ないですね。」


そう言うと何故かコイツは俺を押し倒す。
俺の視界には古泉と天井。
そしてコイツはあろうことか、こんな場所でキスしてきやがった。
しかも舌まで入れたし。


「…ふ、ん…ぁ」


自分のモノとは思えない、鼻にかかった甘い声がでてきた。
だんだん酸欠で、頭がぼぅっとしてくる。
しばらくして、やっと唇を離してくれた。


「さて、今から私に犯されるのと、理由を言うのどちらがいいですか?」
「…。」
「…返事がないということは、ヤっても良いってことですね。」


そう言うと、古泉は俺のブレザーのボタンに手をかけてきた…


「っ!待て!言うから!言いますから!」
「ほぉ、そうですか。残念ですね。」


なにが残念だ、スケベ親父。
危うく学校で一試合しちゃうとこだったじゃねぇか。


「で、なんでくれないんですか?」
「それは…」
「それは…?」


いつもとは違う、安心させてくれるような声色で話しかけてくれる。
いいか、いっちゃおう。


「お前が…女子から…チョコいっぱい貰ってて…嬉しそうで…俺のなんて…」


やべ、なんで声震えてんだろ。
鼻の奥がツンとしてきたから、多分泣きそうなのだろう。


「い、らない…かなっ…て」
「…そういうことだったんですね。」


俺の上から退き、机の上のチョコに手をかける。
何をするのだろうと、不安の目で古泉を追いかける。
チョコが沢山入ってる袋。
それを運び、ゴミ箱の真上に。
…おい、もしかして。

<がさっ>

こいつ、マジでやりやがった。
俺が呆気にとられていると、コイツはその隙に、俺のチョコを手から奪う。


「これで、いいんですよね。」


そして、ラッピング袋からチョコを取り出し、口の中に放り込む。


「…ごちそうさまでし、」
「何がごちそうさまだぁ!!」


ツッコんじまったよ!
いや、確かにチョコの山は嫌だったよ。
だけど、部室のゴミ箱に捨てることはないだろう!


「そうですね…涼宮さんに見つかりでもしたら、怒られてしまいますね。」
「いや、それもあるけどなんで捨てた!?」


お前は鬼畜か!
鬼か!悪魔か!
悪魔で執事か!


「だって、コレ捨てないと貴方チョコくれなかったでしょう?」
「そりゃ…確かにそうだけど…」
「…私だって、貴方からのを今か今かと待っていたんですよ?」


は?
お前、何?待ってたの?


「そうですよ。アピールしたじゃないですか。」


そう言いながら、ゴミ箱からチョコの袋を出す。


「貴方が、私に渡すのを忘れてるんじゃないかと思ってね。」
「…へ?じ、じゃあ見せびらかした訳じゃないのか?」


いっぱい貰ったぜ!いいだろう!みたいな…
俺が質問すると、古泉は笑いやがった。
うわっ、ドキッとするじゃねぇかコノヤロウ。


「なにを言ってらっしゃるんですか。…私が貰ってうれしいのは貴方のチョコです。」


そして古泉は俺のチョコをもう一粒口に含み、そのまま唇を重ねてきた。
口移しで入ってきたチョコ。

…苦いはずなのに、なんか甘く感じる。
それは、俺のチョコに隠れていた甘さか、このキスのせいか。





→あとがき
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