BL短編

□ゴシル/ポケスペ
2ページ/3ページ



ちょうど曲がり角の所で、何かとぶつかった。
この衝撃などから考えると、ポケモンではなく人間だと確信した。


「すまない。大丈夫か?」


こちらも片膝を付く事になってしまった。
だが、考え事をしながら歩いていた俺に非がある為、謝らなければいけない。
不覚だ…。


「いってー!気をつけろよな!」


…この声、聞いたことがある!

俺は、さっと顔を上げる。
やっぱり…


「まぁ、俺も悪かったけどさー…」


声の主は、俺と視線を合わせる。


「…。」
「…。」
「…。」
「…。」
「はぁーっ!?なんでお前がここに!?」
「それはこっちのセリフだ。ってか、五月蝿い。」


奴の叫び声の所為で、周りからの視線が痛い。


「おい、こっちに来い。」


まだ立ち上がってもいない奴を、路地裏―――さっきの看板の所へ連れて行く。


「何だよ!痛ーな!」
「!すまない!」


なにしてんだ?俺?
女ならまだしも、男ならこれくらいの事しても大丈夫だろ?
奴は男だ!何をしてんだ俺は!


「…どうした?」
「〜っ。なんでも、ない。」


奴が心配そうに俺の顔を覗き込む。
お前もお前だ!俺は敵だぞ!


「まぁ、それならいいんだけどよ。」


そうして奴は、いたずらっ子のような笑顔を見せた。
だからな…俺は敵だぞ…


「そういや、なんでこんな所に連れてきたんだよ。」
「…。この顔はなんだ。」


俺はポスターを指差す。
奴は、それをしばらく見て…、そして笑いながら言った。


「傑作だろ?こんな顔の奴、どこにもいねーだろ?」
「そういう事じゃなくて!」


つい声を荒げてしまう。
奴は俺を怪訝そうな顔で見てきた。


「じゃあなんだよ。」
「…俺は、一応強盗だ。何故お前は警察にウソをついた?最悪、お前も捕まってしまうだろう?」


目を丸くさせ、三回位瞬きした後、奴はまた笑った。


「お前とのポケモンバトル、決着ついてないじゃねーか!」
「は?」


何を言い出すんだ!

「そしたら、今すればいいじゃないか!」
「そんな事したら、街の人に迷惑かかるだろ?それに…」
「それに?」
「またお前と会いたかったからさ。」


本当に何を言い出すんだコイツは!


「そーいや、まだ名前聞いてなかったな。俺はゴールドだ!」
「…シルバー。」
「シルバーか、まぁ良い名前なんじゃね?俺には負けるけどな。」


良い名前か…。
こんな事言ってくれたの、姉さん以来だ。
本当にコイツ…ゴールドといると調子が狂うな。
…少し、嬉しかったなんて言えな…


「…シルバー?顔紅いぞ?」


ゴールドの声で我に返った。
そして言われた通り、頭に熱が上がっていくのが分かる。
しかも指摘された事により、ますます紅くなった。


「…もしかして熱があるんじゃねーか!?」


そう言ってゴールドは、俺の額に触れた。
額で。

額!?
手じゃなくて!?
そもそも触れるか!?
頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。


「――っおい!!」


声が上擦ってしまった。


「お前本当にだいじょ、」


ゴールドが言い終わる前に、シードラを出す。


「えんまく!」
「おわっ!」


そのまま俺は逃げ出した。
風を受けるが、顔の熱はなかなか下がってくれない。
しばらく俺は街中をずっと走り回ることになった。




…なんだよ俺!
なんなんだよこの気持ち!




→あとがき
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ