円堂のみぞ知る世界

□EP.1世界はアイで動いてる
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…冥界法治省極東支局…


「まだ捕獲率3%!?」

「協力者(バディー)の生死…」

「現在、ヨーロッパの駆け魂は…」

「協力者(バディー)のケツ叩いてやらせろ!!」


するとしばらく騒ぐ悪魔達の元へ、一つの足音が近付いて来た。


「遅れましたーっ!!」

「なんだアキ!!そのほうき!!
いつまで掃除係のつもりだ!!」

「うぅーー
これがないと落ち着かなくて……」


そう言ってアキに怒ったのは、亡霊対策室長・ヒビキだ。


「地獄も末だな…
掃除係が駆け魂隊とは…」

「が、がんばります!!」

ぴしっと敬礼するが、余りしっかりしたようには見えないようだ。


「それでヒビキ室長?
本当にそんな人間がいるのですか?
男性の心を、
思い通りにできる人間なんて…」


アキの発言と同時に、辺りの空気が一気に張り付き、ヒビキの声にいっそう重みがかかった。


「   いる。

その名も…落とし神!!」


ヒビキは一呼吸置いて言葉を続ける。


「これ以上の協力者(バディー)はいない!!
まずはこの男を探せ!!」

「りょうかいです!!
アキュシア・デ・ルート・イーマ、駆け魂討伐に出発しまぁす!!」

「あ、おみやげ送ってね
人間界の。
ビリーのDVDでいいわ。」

「まだやせる気ですか?」



…………………



…雷門学園高校…


円堂Side




羽鳥 有志…


『誰、お前?』


これが今回のターゲットか…


『なんでここが分かったんだ……?』


抵抗しても無駄だよ!!

エンディングはすでに見えた!!


運命は、


『お…俺…
お前が好きだ!!』


常に一本道!!


フッ……



これで10000人目のヒーロー攻略!!

俺に解けない乙ゲーはない!!
フハハハ!!

自らの力に…
背筋が寒くなる…!!


そう高ぶっている俺の所へ、担任兼国語担当の瞳子がやって来ていた。

ゲームしてて気付かなかったか……


「ゲームは楽しい?
円堂君。
担任さんの授業より楽しいものがあるのかしら?ねぇ?」


ゲームと授業ねぇ……

うーん…


「俺の知ってるゲームのすべてと先生の授業を今比較してみました。
授業よりおもしろいもの5012タイトル。
同じくらいのもの15タイトル。
授業よりつまらないもの1タイトル。」

「そう。
その1タイトルとは?」

「すんません、セーブポイントまで待ってください。」


断った俺に瞳子の鉄拳が飛んできたのは言うまでもなかった。







俺の名は円堂 守。
5月5日11時29分35秒生まれ17歳。
身長155センチ、
体重43キロ、
得意科目、国語、数学、理科、社会、英語、技術。

好きなものは…
男子だ。

当然さ、
俺くらいの年の男子なら…フッ…

え?
普通じゃない?
可笑しいって?
ほっとけ。

ただし…


「オタバンドーー!
ちょっと、ちょっと!」


廊下の奥から話しかけてきた奴はダダダダと音を立ててダッシュして来て、止まらずにそのまま俺に突っ込んできた。


「いてっ!!」


俺のPLPも被害を受けて傷がついた……


「おおお俺のPLPがァ!!」

「悪い悪いっ!!
スピード出すぎてブレーキの限界越えてた。」


男子といっても…
好きなのはこっち側のじゃない!!


「なーオタバンドー
今日屋上の掃除やっといてよ!
今日掃除当番 俺とお前だろ?
でも俺、お前と違って急がしいからさーっ…」


今、部活で一杯一杯でさー、ともらす目の前の奴にイライラする俺。

どういう神経だ!?

ぶつかるのと
バカにするのと
頼み事を同時に行うとは!!

俺はヒマ人か?


「ふざけるな!!
断固断る!!」


ビシィッと決めた俺の先には、すでに相手はいなくなって、『ヨロシク☆』と書かれた貼紙が張られたほうきしかなかった……



…屋上…



結局掃除を一人でやる俺。

くそ…

なんて理不尽な奴らだ。

ゲームの世界の男子を見習え!

あの完璧に理論的で美しい存在を!!


俺が好きなのは
ゲーム男子だけさ!!!

現実(リアル)なんてクソゲーだ!!!!


俺はPLPの電源を入れてメールの確認をする。


未読メール813通か…

ふ…
今日の迷える子羊たちの便りだ。

現実(リアル)なんて所詮、仮そめの世界。

ゲーム世界にとどろく俺の真の存在!!


落とし神!!!


そうさ、リアルのような不合理かつ不条理なものに、
かかずらう必要はない!!


俺は、ゲーム世界の神だ!!!


俺は一気にその大量の便りに返事を書きはじめた。


『初めまして!!
落とし神です!!
「ゴスゴスパニック」ですか!!
あれはみんな苦労してるみたいですね!!』

『こんにちは!!落とし神です!!』

『こんにちは!』

いくつか返信していると、不意に変なメールが目に入った。


「ふ…
さて、次のメールは…
ん?」

『落とし神へ
どんな男でも落とせるという噂を聞く。
まさかとは思うが、本当なら攻略してほしい男がいるのだ。
自信があるなら「返信」ボタンを押してくれ
 [返信]
P.S.ムリなら、絶対押さないように!!

ヒビキ・ライライケン』


なんだ?この挑発のアロマが漂うメールは!!

俺を誰だと思っているんだ!?

神は、逃げない!!


俺はそう決意して返信ボタンをおした時、空から雷みたいに風が降ったように竜巻が起きたかと思うと、空から変な女が下りてきた。

ピンク色の羽衣を纏い、髪の毛を結んでドクロのピンを止めて天女みたいな格好をした、変な女が。


「契約ありがとうございます!!神様!!
さあ、参りましょう!!

 駆け魂狩りに!!」


そういうとそいつは俺の腕を引っつかんで、上空高くに上った。


「う、うわあぁ!!」


驚くのは無理もないだろ?
だって、いきなりだし…な……?



…無人の教室…


なんだ?
今空飛んだか?

ぜー、ぜー…


「広域チェックでは反応あり…
次は精度を上げて…
個人特定…だっけ?」


ぶつぶつ言いながらドクロみたいなピンをビコピコいじってやがる…。


落ち着け!!
リアルに飲まれるな!!

まずはセーブ!!

順序だてて論理的に考えれば問題はない!!


「整理しよう。
まず、お前は何者だろうか?」

「私、アキュシア・デ・ルート・イーマと言います。
みんなはアキって呼んでます!!
地獄から派遣された「駆け魂隊」の悪魔ですゥ!!」


………………


なんの、こっちゃ!!

  ホホゥ
  なんのこっ茶でござるか。
  まこと雅よのう…


君子危うき3D男(女)に近寄らず!

ここは、関わらないのが得策!


「さて今日は木曜か。
ゲーム買いに行くか。」


俺はそのアキとかいう奴を無視して教室から出て行こうとした。

だが、リアルはそれを許してはくれないらしい。


「気をつけてください!!

 首、取れちゃいますよ?」

「……首?」


言われて自分の首を確認してみると、黒い輪のような首輪がついていることに気付いた。


「な、なんだ?
この首輪?」


アキは少し間を開けて答えた。

「神様は、
悪魔と契約されたんですよ。
契約書を送られましたよね?
室長のヒビキさんあてに。」


…………


ム…ムム!!

あ…あのメールか!?


「地獄の契約は厳しいのでご注意ください。
もし、契約を達成できなかったり、許可なく破棄しちゃいますと…

その首輪が作動し、
首をもぎとります。

しかもその後首が…
キャー言えません!!」


……はぁ?


「言えよ!!
なんだよその後!!」


ていうか!!


「ふ…ふざけるなァァ!!
は、はずせええ!!」

「大丈夫ですよ。
駆け魂を捕まえれば
外れますから。」

「かけ…なんなんだそれは!!」


俺がアキに問い掛けた瞬間、アキがつけている頭のドクロが「ドロドロドロ」と鳴りはじめた。


「き…来ましたあ!!」


あとと、とアキはほうきを持ったかと思うと、テキパキと掃除を始めた。

なんなんだあいつは…。


「神様こちらへ!!
綺麗にしてあります!!」


あ、俺のために綺麗にしてくれたんだ。

アキに言われる通り、俺は窓側へと寄って行った。


「下の広場!!
あそこに駆け魂がいます!!」


アキが指差す方向には、陸上部の男子がいた。


「あの先頭の少年!!
はっきりと奴らの気配が見えます!!」


げっ…あいつは確か…
さっき屋上の掃除を押し付けてPLPに傷をつけて俺をバカにしたやつ!!


「か、かけたまってなんだよ?」

「「駆け魂」とは地獄から抜け出した悪人の霊魂です。
死んでも悪人は悪人!!
奴らは再び地表で悪事を働くべく地獄の囲いを抜け出し地表へやって来るのです!!」


…ふんふん…


「駆け魂を捕まえるのは非常に困難なのです。
何しろ、極めて特異な場所に隠れていますので…

  人の心のスキマ

が、駆け魂の隠れ処なのです!!」

「心の…スキマ?
捕まえようがないだろ、
そんなの?」


う!?
話にのっちまった…!!


「そこで、人間の協力者(バディー)の出番です。
心のスキマが埋まってしまえば、駆け魂は居場所がなくなり出てきます!!

心のスキマを埋めるには恋が一番!!
落とし神様のお力で、あの少年の心のスキマを埋めていただきたいのです!!」

ま……
まてまてまて……
普通そういうことは女子に言わないか!?
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