恋戦隊☆LOVE&PEACE(長編)
□Lovesick vol1(猿飛)
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それは、春…桜舞い散る季節。
イエローマンの閉店後、猿飛が自宅マンションに向かう帰り道の事だった。
道の反対側から、見覚えのある二人にが歩いて来た。手を振ろうとした猿飛は、次の瞬間、思わず無意識に身を隠してしまう。
男が女の肩を抱き、恋人同士がじゃれあっている様に見えたのだ。
その男女とは、イエローマンの客である山崎と、彼の後輩であり猿飛の同僚でもある結だった。
二人は、以前同じ職場で働いていたと本人達から聞いていたし、一緒にイエローマンに来てくれた事もある。仲の良い先輩後輩だとは思っていたが、恋人関係にあるとは思ってもいなかったし、信じられなかったのだ。
−−−翌日
「はぁぁぁぁぁ…」
「ちょっと、朝から何回ため息ついてんのよ!」
「だってぇ、俺落ち込んでるんだよぉ」
「何甘えちゃってんの?黄平ちゃんらしくないわねぇ…」
朝っぱらから、猿飛は神谷に絡みまくっている。そう、夕べの衝撃を引きずって、凹んでいるのである。
「桃さん、おはようございます!隣いいですか?」
「あら、結ちゃんおはよう!どうぞどうぞ…」
「黄平さん、おはよう!」
「オハヨ…」
猿飛は、拗ねた子供のように思いっきり不機嫌そうな態度で挨拶をした。
「何かあったんですか?ご機嫌斜めですよね?」
朝食をほおばりながら、猿飛を気遣う結。不機嫌の原因が目の前に居るのだが、さすがの猿飛も口には出さず、態度に表すしかない。
「べーつーにー!」
「変なの…。桃さん、変ですよね?黄平さん」
「…気にしなくていいと思うわ。黄平ちゃんは意外とお子ちゃまって事だから」
「ちょ、桃ちゃん!!」
「本当の事じゃない?どうせ原因は…」
「わああああああああ!」
慌てふためいて、神谷の口を押さえる猿飛。何が何だか分からない結は、ぽかんとして二人のやり取りを見ている。
「プレイボーイの黄平ちゃんが…変わるもんよね?ま、あとはごゆっくり?」
「桃ちゃん!!」
睨みをきかせる猿飛を残し、神谷はそそくさと退散してしまった。
「……」
「……」
何故だか気まずい空気が漂う。
目が合えば、にっこりと笑い返す結だが、不機嫌極まりない猿飛に、どう接していいか迷っているように見える。猿飛は、思い切って結に、夕べの事を聞いてみることにした。
「あの…さ、結ちゃん。夕べ…何してた?」
「夕べですか?」
「うん」
「夕べは山崎さんとご飯を食べに行きましたよ?」
結は、屈託の無い笑顔であっさり答える。あまりにもすらっと答えが出てしまい、猿飛は二の句を継げなくなってしまった。
「すっごく美味しいイタリアン!雰囲気も素敵でしたし、今度、皆で行ってみませんか?」
「あ…そう、なんだ…」
「はい。山崎さん、結構グルメで色んなお店を知ってるんですよ」
「…よく二人で行ったりするの?」
「山崎さんはお店が忙しいので、時々ですけどね。ぶっちゃけ、ご馳走になったりもします♪」
「ふ、ふーん。そっか…」
「それより黄平さん。もしかして、体調悪いですか?顔色が…」
「ううん…大丈夫」
猿飛にとって、聞きたくない情報のオンパレードで、精神的ダメージは計り知れない。無理して笑顔を作っても、引きつり笑いになってしまう。
キュイーンキュイーン!!
「エマージェンシーコール!」
「ああ、こんな時に…」
『皆聞こえる?メノスが現れたわ!至急現場に直行して!?』
絶不調の黄平をあざ笑うかのようなエマージェンシーコール。
神谷の指示の元、黄平と結も現場へ向かった。