txtlupin

□彼女の去り際にはいつも右耳にピアスが光っていた
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いつだったか、ルパンとの仕事で宝石商へ盗みに出掛けたときだ。今まで名前にプレゼントなんてやったこともなかったが、テーブルきごまんと並べられたダイヤの端っこに異様な存在感のある薄い青色のピアスをみつけて、なんとなく名前にプレゼントした。特に箱に入れるわけでもなく、そのままの状態で。当の名前はといえば、大喜びするわけでもなく、ありがとう、と小さく微笑んだだけだった。それからいつも名前はそのピアスをつけていた。

名前は背中が一段と綺麗な女だった。後ろ姿で男を引き寄せ、振り向いては男を落とす。俺が名前に呼びかけるときは、いつも彼女は俺に背中を向けていた。そして、なあに、と振り向くときさらさらした髪とピアスと瞳はいつだって揺れていた。






次元大介と言う男は、ルパン三世と違って女にいきる男ではなかった。己と銃と酒と煙草、それから女。

わたしは、いつまでも牢獄のなかに住んでいる。牢獄という名の天国という牢獄。好きだった。

だからこそ、踏み出せない。自分を出して嫌われるだけの度胸はない。やはりわたしも自分が大切だった。次元の男の世界というもの、気まぐれがよくわからなくて、狼狽していただけだった。もしかすると、わたしのなかに次元大介のイメージが凝り固まっていてそれを崩したくないだけだったのかもしれない。大好きだから早く捨てて欲しい。それだけを願っていた。
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