あなた様以外にあちきは

□“どうして”は増える、一方でありんす
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 夜風が秋の香りを運びはじめた。





 只今綺世(あやせ)は吉原の門の上に立っていた。
 あのドでかい門に、だ。



 何をするでもない。
 ただ、綺世はたたずんでいた。





 幼い頃から綺世は運動神経が忍者並みによかった。
 だから。

 吉原から逃げることなど
 造作もない。


 でも
 居場所がなかった。







「神様、あちきはどうすれば良いのでありんしょう・・・」






 白い月へ向かって、そう呟いた。


 そうしたら。
 神様が

 いじわるな奇跡をお起こしになりんした――・・・。

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