読んじゃう?

□ビターチョコ
1ページ/1ページ




「ポッキーゲームこそエロの極みよ!」

俺の前に立つ女はそこそこ膨らみのある自分の胸に手当てて誇らしげに、そりゃもう誇らしげに、声を挙げた。

「食うか食われるかのあのスリル、溶けるチョコと交わる唾液、ふやけたクッキーの味気なさと、最後の一口を奪われたときのあの物足りなさ!!」

意味がわからない。
この場にいる全員がおんなじことを思っているに違いない。勿論目の前にいる女以外だけどな。

「さあて、今回のお題はポッキーゲームよ!」

また何か言い出したぜ、おい誰か止めろよ。
またも全員の心は1つになる。勿論というか、絶対に目の前の女と心が1つになることはないが。
心が1つになると言うのもおかしな話だけども、こいつの心が向こうからこちらに近づいてきたとしても僕らが蜘蛛の子散らすかのごとく逃げ出すであろう。
こいつはきっと将来、残念で寂しいやつになるんだろうな。
可哀想に。
一緒に居てやるつもりもないけどな。
さて、くそ女のせいで前振りが長くなってしまった、すまない。
一応説明はしておくが、ここは文芸部室でもなければ、生徒会議室でもないし、団長がいなければ生徒会長もいない、ただ、大量の写真と副会長がいるだけの写真部の部室である。
キャラかぶりも台詞パクリもほどほどにしろと言うくらいのトレス具合だな。訴えられた時用の言い訳文でもお家に帰って考えてたらどうだ?
でも、キャラ立てめんどくさくてそこら辺から連れてきたようなこんな女でも、ただひとつ他とは違う設定がつけられている。
それは、こいつはここの部員全員に嫌われているということだ。
ヒロインは好かれると誰が決めた?
あんな性格のやつら、現実に連れてきてみろよ。嫁だったその女、絶対に殴り倒したくなる。絶対にだ。
リアルにいたらど真ん中でいじめられ対象にはいるだろうぜ。こいつがそうなんだから間違いない。
まあ、それに気づくか気づかんかはそいつ次第だけどな。

「ねえ、聞いてる?佐々木崎?ほら、ポッキー!さっさとちゅーしちゃいなさいよ!!ほら、ほら!」
「うわ…」

ずいっ、と目の前に進められたポッキーは、そいつの私物で思わず顔をしかめながらそれをはたき落としてしまう。
誰とちゅーしろって?まさかお前なんかとじゃないだれろうな。
当たり前だが、ポッキーは細い体を簡単に折り、床に落ちてしまった。

「あ、」
「ああー!!佐々木崎が私のポッキー落としたーっ!」

やばい、と声を出そうとしたが、喉の奥に声の抑制装置があるかのごとく、綺麗に言葉は途切れた。
食べ物に悪気はないし、母さんから食べ物を粗末にするなと言われていたのに、すべてはこいつのせいだ。
背中に感じる他の部員の色々と冷たい視線を無視していると、俺の目の前でそいつは悲鳴を挙げて床に落ちたポッキーを救出して、そのままそれを口のなかに頬りこんで至極上手そうに咀嚼した。
ぐ、と胃のなかでムカムカするものを押し留めながら、俺は冷たい視線をそいつに向けた。すると視線に気づいたのか、そいつは座り込んでポッキー口に放り込んだ状態のまま上目使いににへと笑ったてへらりと言葉を吐く。

「えへへ、3秒ルール」

俺はそれに完璧なる嫌悪を全身で表すかのごとく、その腹が立つ顔面を蹴り飛ばしてしまった。
思った以上に強く入ってしまい、そいつは2mくらい飛んでから壁に頭を打ち付けて床に崩れ落ちた。
ぜえはあぜえはあ。と俺はたった今触ってしまったものへの不快感と、さっきみた無邪気な顔を思い浮かべて最高潮の吐き気に部室を飛び出して手洗い場に全てを投げ出す。
ありえねぇ。
別あいつは顔が悪いとかそんなたちではないのだが、あの顔は何故だか無性にぶん殴りたくて仕方がなくなる。
理由はわからない。と言うか理由事態あるのかわからない。
しかし、まるでそいつは嫌われるためだけ生まれてきたかのように平然とそこにいるのだ。
そして、あいつは俺が戻ると顔を腫らして高らかにこう叫ぶのであろう。

「すべては、この野々島ののにおまかせよ!」







今まで書きたかった物を全部詰め込んでポッキー無理矢理突き刺し、眠さに負けた結果がこれだよ!
意味がわからないんだよ。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ