HERO ACA

□S級犯罪者が、ヒーローたちのヒーローになる話
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全てが終わった戦場に溢れるのは罵倒と悲痛の声。


「マコト!しっかりしろってばよ!!!」


「マコトさん...!そんな...!」


暁の、黒と赤の衣をまとった俺を優しく抱きしめてくれるお似合いの二人。


「この人って...確か暁の忍だったんじゃ...?」


「チョウジ!とりあえず今はサクラ急いで呼んでこい...!」


「サクラはもっと戦場の端よ...!ここからじゃどうやっても間に合わないわ!!!」


木の葉の種だった若者たちに看取られて、なんと幸せなことか。


かと思えば、木の葉の裏切り者がどうして加勢したのかだとか、死んで当然だとかいう叫び声も耳に入って来る。


多くの忍に罵倒され、卑下され、なんと自分に相応しい最期だろう。


『な、る...ゴフッ......なる、と...』


「もうしゃべるなってばよ!」


聴覚だけが、まだ正常に機能している。


『お、れ...』


「頼むから...!頼むからしゃべるなってば...!」


九尾のあの子は泣いているのだろう、頬に小さく水が落ちてきた。


「マコトッ...!」


俺の秘密を知ってしまっていた、俺より十以上も歳下のこの子はきっと、誰よりも優しい火影になるだろう。


『おま、え...は...やさ、しいな...』


「違うってばよ...俺なんかじゃなくて、マコトが...!マコトが...!!!」


『は、はは..』


「マコトが俺たちに加勢してくれたから!!!」


抱きしめてくれている腕の力が強くなった。


『お、れは...た、だ...ほ、ほかげ...さま...と、の...やく、そ、く、を』


《マコトよ、もしこれから木の葉の未来が潰されてしまうようなことがあればーーーー》


《今の任務を放棄してでも、守ってやってくれんかの》


『お、れは...しん、だら...あの...あの子、に、』


会えるんだろうか。


俺の最期の言葉は、新たな爆発音に消され、そして誰にも聞かれることなく俺の死体とともに空気へと溶けた。





























三代目より潜入の任務をいただき、木の葉の裏切り者として暁に入団したばかりの俺のところに、たった数週間だけいたあの小さな子供。


《おにぃさんは...ゔぃらん...?》


追い忍を返り討ちにして俺だけが生き残っていた戦場に、あの子は突然現れた。


《ヴィラン...なんだそれは?お前はーーーー何者だ?》


目にいっぱい涙をため、それでも俺のことをしっかりと見つめていた。


《ぼ、ぼくは...としのり。やぎ、としのりです》


俺はリーダーやマダラにバレないように、アジトとは別の隠れ家に子供をかくまった。


当時、まだ二十と少ししか生きていなかった俺には、何も知らない幼子を殺すほどの決心はなかった。


寝床を与え、食事を与え、時たま穏やかな時を過ごした。


"ヒーロー"という"忍の世界"とはかなり異なる子供の話に、違う世界から来たんだろうと憶測した。


それでもいつかは帰れると確信のないまま子供を励ます日々。


"コセイ"がないんだと泣き、それでも強かったあの子。


可愛らしい金髪を揺らしながら、花畑で遊ぶような優しい子。


まだまだ弱かった俺が、一度だけ手足ももげそうになりながら血まみれになってあの子を守った時ーーーー


瞳の奥に何か燃えるような意思を、あの子は持っていた。


そして、襲撃のあった日から数日後、あの子は隠れ家から消えた。


俺はなぜか、元の世界に帰れたんだなと確信していた。


ちゃんとご飯は食べているだろうか。


眠る時に布団はしっかりかぶっているだろうか。


病気や怪我をせずに生きられているだろうか。


優しいまま、大人になってくれているだろうか。


すぐに忘れるだろうと思いながら、結局1日たりともあの子のことを忘れたことはなかった。


もし神様が俺のことを許してくれるのであれば、もう一度だけ、トシノリに会わせて欲しいーーーーーー







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