JOJO
□ナイト・ナイト
1ページ/2ページ
「ッ...!!!!」
夜時が目を覚ました時、そこはやけに天井の高い部屋のベッドの上だった。
慌てて体を起こして周りを見渡すが、周囲に敵らしき殺気は感じず、寝かされていた部屋も客用なのか清潔で美しく飾り付けられていた。
「ここは...?」
"一人ひとぉり...同じ過去に飛ばしてやる...生き残れるか分からない場所へ...古い過去へ...ククク...それがジョセフ・ジョースターの過去なのか、ポルナレフの過去なのか、アブドゥルの過去なのか、この犬の過去なのか...それは俺にもわからない..."
状況を掴みきれない夜時の頭にふと敵スタンド使いの言葉がよぎった。
負けることはないと信じているが、万が一ということもある。
「他にも誰かここへ飛ばされているかもしれない...!」
裸足のままベッドを飛び出し、そのまま部屋の扉へと走る。
「!鍵が...!」
外側から鍵がかけられているようで、扉はビクともしない。
「ッ...夜空の騎士[ナイト・ナイト]!!!」
夜時のスタンド...漆黒の鎧をまとった騎士が剣を振り上げ、扉を断ち切る。
そして、スタンドを出したまま夜時は廊下を闇雲に走った。
「承太郎!!!!ジョセフさん!!!!ポルナレフ!!!!アブドゥルさん!!!!イギーーー!!!...ッ...花京院!!!」
夜時は仲間の名を呼びながら廊下を走る。
自分の声とブーツの足音だけが、虚しく廊下に響き渡る。
「承太郎!!!ッ、ここは...キッチンか?」
キッチンには、大量に食料が保管されており、かつ綺麗に手入れされていた。
現在進行形で住んでいる者が複数人いるようだ。
...なぜか今はもぬけの殻のようだが。
「アブドゥルー!どなたかー!誰もいないのですかー!」
若者が服をあわてて脱ぎ散らかしたような部屋もあった。
何か名前が特定できるものがないか探したが、その部屋には特に見当たらなかった。
もう一つ同じような部屋があったが、そちらは綺麗に整頓され、机の上に"愛しのシーザーへ"というメッセージが差し込まれた花束が置かれていた。
「イギー!いるなら返事をしてください!イギー!」
陽の当たる部屋には浴槽がと小さなテーブルのみが置かれており、そこからの景色は日本では見慣れない、とても美しい風景だった。
波の音が聞こえていたのでもしやと思っていたが、そこは夜時の予測通り、島だった。
「花京院!!!ポルナレフーーー!!!誰も来ていないのですか!?」
島の外周も回りながら夜時は走り続けたが、とうとう人と出会うことはなかった。
「誰も...ここには来ていないのですね」
と夜時が足を止めた、その時だった。
「あのォ、どなたかしら?」
「ッ...!!!」
背後から聞こえた声に慌ててナイト・ナイトを出現させながら振り返る。
少し距離があるとはいえ、敵陣地かわからないところで素人の気配に気づかないほど気を抜いてしまっていた。
「あ!貴方は!よかった〜目が覚めていたのね!」
ナイト・ナイトが剣を突き出して構えているのに、胸に刺さりそうになる直前もこちらへの歩みを止めないこの女性は、おそらく一般人なのだろう。
すぐさま剣を収め、ナイト・ナイトを己の背後へと控えさせる。
「もしかして、貴方が私をベッドへ...?」
「ええ、私が昨日海岸で倒れていたのを見つけたの!でもベッドまで運んでくれたのはジョジョよ。私、さすがに男の人なんて運べないもの!」
彼女は太陽のように明るい笑顔で笑う。
夜時はその笑顔にどこか見覚えがあった。
そう、承太郎の母、ホリィさんにどことなく雰囲気が似ている。
そして彼女が今、"ジョジョ"と言ったのを夜時は聞き逃さなかった。
「まさか貴方は...」
ジョジョというニックネームを持つ人物を夜時は二人知っている。
ジョセフ・ジョースター、空条承太郎...
そして、彼女の笑う顔は、旅の道中見せてもらったジョセフの写真にーーーーー
「貴方は、スージーQ...?」
「えっ!なんで私の名前を知ってるの?」
驚くスージーQを傍目に夜時は頭を抱えた。
「ここは、ジョセフさんの過去...つまり、人外と戦って火山で飛ばされる時代か...」
ナイト・ナイトが夜時の頭を撫でて慰めたが、夜時の不安が払拭されることはなかった。
.