JOJO

□一筋の糸
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億泰に助けてもらった翌朝、夜時は彼と一緒に登校した。


2人で教室に入ると、仗助が夜時のことを鋭い眼光で睨みつける。


自分でぶん殴った相手の怪我を親友のお願いとはいえほぼ強制的に治させられたら怒るよな、と夜時は内心どうしようと考えていた。


自身が犯人ではないときちんと誤解が解けるまでは、できるだけトラブルは回避したいのが本音だった。


今更事情を説明して協力を仰いだところで、ここまで関係が悪化してしまってはスムーズな連携は取れないだろう。


"感謝"を口にしても殴られそうな気がしたので、夜時はその場で深く頭を下げるに留めた。


頭を下げていたせいで、仗助の目が大きく見開かれているのには全く気づかなかったが。


その場で立ち止まったのを不思議に思ったのか、億泰が夜時の顔を覗き込むように突然その場でしゃがみこんだ。


『(不良座り...)』


「夜時!傷が痛むのかァ?」


億泰は仗助の鋭い視線をものともせず、夜時に声をかけた。


その上席までいくと椅子まで引き、甲斐甲斐しく世話を焼いた。


その光景はまるで、引き取ったばかり弱々しい子犬に世話を焼く番犬のようだ。


「いや、おかげさまでかすり傷しか残ってないし大丈夫。昨日はほんっとうにありがとう!」


夜時が笑顔でそう返すと、億泰も「気にすんなよォ〜!俺がしたくて勝手にやっただけだしなッ」とニカッと彼らしい笑顔で返した。


そのまま億泰は気にすることなく仗助に話しかけに行ったが、仗助の方は機嫌悪そうに教室を出てしまった。


億泰はあわてて後を追いかけたが、結局彼らはHRが始まっても教室には戻ってこなかったーーーー
























「オイ!億泰!!!お前なんであんな奴と仲よさそうに口聞いてんだよ!」


仗助が億泰を引き連れてきたのは学校の屋上だった。


「だってよォ〜あいつ多分悪い奴じゃねぇぜ、仗助〜」


「だっても何もあるか!!!アイツは承太郎さんの敵で...」


「それ、見間違いとかじゃねーの?」


億泰の、まるで夜時をかばうような言葉は仗助の怒りにーー火に油を注いだ。


「承太郎さんがブッ倒れて、苦しんでる所にはいつもアイツがいる!!!俺はこの目で何度も見てんだぞ!?」


怒りを抑えきれない仗助は億泰の襟元に掴みかかる。


確かに、彼が何度も見ているその光景に間違いはない。


承太郎が苦しみ、意識を失う現場に仗助が駆けつける時にはいつも、傍にスタンドを出している夜時がいた。


ただ、少し事実と異なるのは"夜時は承太郎を攻撃している"のではなく、"承太郎を護ろうとしている"のである。


誤解を招いても仕方ない光景ではあるが...。


承太郎を護る"アテナの織物"が消耗し、それを夜時が修復する間は護りの力が薄くなり、どうしても承太郎は意識を飛ばしてしまうのであった。


その現場に仗助が何度も居合わせてしまっているのは、もはや夜時の運が悪いとしか言いようがなかった。


また、目覚めた承太郎が夜時を野放しにしたままだということも、仗助に何も話さないということも、仗助の中の夜時への疑心に拍車をかけていた。


「う〜ん...俺よォ、バカだから仗助みたいに色々考えたりはできねーけどよォ。仮に夜時が敵だとしても、承太郎さんがそんな奴を普通に野放してるとは思えねーんだよなァ」


億泰は襟元を掴まれたまま、仗助から視線を外すことなくハッキリと彼に告げる。


やっぱ夜時は敵とかじゃなくて普通にイイ奴だと思う、と。


仗助がその言葉にプッツンし、億泰と殴り合いの喧嘩を始めたことは、教室にいる夜時には知り得ぬことであった。





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