名探偵
□俺だけは許すな
1ページ/3ページ
昼、零の学校から突然電話がかかってきた。
用件は分かっていた。
"ラバーズ"を、零のそばへつけていたから。
『...この度は誠に申し訳ございませんでした』
雅治が校長室に着いた時にはすでに、相手方の両親がスーツ姿で到着していた。
親御さんは我が子を守るように間に挟みながら、俺が頭を下げるのを見て一層顔を青くさせた。
「いえッ、そんな、うちの子が悪かったんですッ!」
「申し訳ございませんでした...!どうか、どうかお許しを...!」
部屋に入る直前、教師からオブラートにオブラートを重ねた説明がなされたが相手方は現場の状況をそのまま伝えられたらしい。
親御さんは俺と零に向かってひたすら頭を下げ謝罪を繰り返していた。
まるで、命乞いをするかのように。
『もう頭を上げてください、先に手を出したのはうちの弟ですから』
「ッ...兄さんッ!」
ホッとしたような表情の相手方とは反対に、零はまだ納得がいかない様子だった。
「コイツが兄さんのことを...!酷いことを言ったんだ!!!」
零に指を指された生徒は俺が現れた時よりさらに顔をグシャグシャにさせて、涙を流しながら何度も許しを乞うていた。
「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!」
「コイツが悪いんだッ!!!」
『...零』
「ごめッ、んなさい!僕が悪かったです!ご、ごめんなさいッ!許してくださッ!ごめんなさい...!!!」
「コイツが兄さんのことをまるで犯ーーーー」
『零!』
相手方の様子を見かね、俺は零の前で初めて声を荒げた。
横目で零をみると、彼は蚊のなくような声でごめんなさい、と言葉を漏らした。
『零、何があったのか現場にいなかった俺には分からない』
「...うん」
『だがな、零。自分から手を出したらダメだ。何を言われても、何をされてもだ』
「...ごめんなさい」
その後、俺と零は相手方にもう一度頭を下げて謝罪した。
今回の件は喧嘩両成敗ということで、どちらの内申書にも響かないよう学校側が処理してくれるとのことだった。
ありがたい話である。
●●