白雪解けゆく

□第一章-遅春
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彼女からしてみれば、ただの偶然なのかもしれない。

だけど、俺はそれでも構わない。


彼女と出会えたこと。

それは俺からしてみれば全てが必然。



――それより他になりようのないこと


だって、俺はいつだって望んでいる。

僅かでもいい。彼女との関わりを。

















-切原赤也-















「久しぶり…っスね」


そう言って声を掛けたのは俺の方。



『そう、だね』


そして、困ったような笑顔で答えたのは彼女。





――昼休み。

中等部と高等部の間にある中庭で俺たちは鉢合わせた。


まさか優里先輩に会えるだなんて思ってもいなかった俺は、嬉しさと少しの気まずさでいっぱいになる。

彼女に伝えたいことは沢山あったはずなのに、上手く言葉が出てこない。


そのことにもどかしさを感じながらも何か話さなければ、と思い口を開く。





「あのっ、優里先輩!俺――」


けれど、彼女は俺の言葉を最後までは聞いてくれなかった。



『赤也!……彼女、出来たんだね?可愛い子だし、よかったじゃない。おめでとう』


彼女が俺の言葉を遮り発したものは俺にとって一番、聞きたくない言葉。



――おめでとう、だなんて彼女の口から聞きたくなかったし、彼女だけには言ってほしくはなかったんだ。

そんな風に祝福されたって俺はちっとも嬉しくない。


だって俺が本当に好きなのは、本当に隣に居て欲しい存在はあの時から変わってないんだから。










『じゃあ、私は急ぐから!』


そう言って俺の横を足早に通り過ぎて行く彼女の姿は、まるであの日と同じようで。





『……私たち、終わりにしよう?』



『それじゃあ、バイバイ。……赤也』






「優里先輩っ」


俺は思わず叫び、呼び止めていた。



『……なに?』


振り返らずに足を止めた彼女は冷たい声色で問う。

俺を拒絶するかのようなその音色に心臓がズキリ、と痛んだ。



――だけど、今度こそは伝えなければいけない。

あの日のように何も言えずに見送れば、俺はまた後悔するから。





俺は拳を強く握ると、真っ直ぐに彼女の背中を見つめた。



「俺はガキだから先輩に嫌われても当然かもしれない。だけど!俺はいくら先輩に嫌われても……先輩を嫌いになることなんて出来ない、んスよ」


俺は彼女よりも年下だし、バカで、ガキっぽいから。

彼女はそんな俺との付き合いが嫌になったのかもしれない。

同年代や年上の方が魅力的だと感じて別れを切り出したのかもしれない。



……それでも。それでも俺は彼女が、優里先輩のことが好きだから。

嫌いになんて、忘れるだなんて出来ないんだ。










『ダメだよ。そんなこと言ったら、ダメなんだよ?』


小さな声で震えるように呟いた彼女は、そのまま振り返ることなく走り出す。



「優里先輩!」


咄嗟に彼女の名を呼ぶも、彼女がそれに答えてくれることはもうなかった。





「――なんで、何でダメなんスか?」


ダメなんだよ、その言葉の意味。

それが俺には分からなかった。



何がダメなのか、どうしてダメなのか。

ちゃんと教えて下さい。話して下さいよ。





「……優里、先輩」










その言葉の意味を教えてほしい。





〔To Be Continued...〕

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