白雪解けゆく

□第二章-夏風
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決めたんだ。

この想いを正面から彼女に伝えるんだ、と。


好きだと言う。

たとえ彼女が俺を嫌いだとしても、それでも知っていてほしいから。





――俺の、本当の気持を。
















-切原赤也-















由里先輩の後を追い、探し回っていた俺が辿り着いたのは近所にある小さな公園。

その公園の中央にあるブランコに彼女はぽつり、と座っていた。





「――優里、先輩っ」


その名を呼べば、彼女は驚いたような表情で顔を上げる。



『あ、かや……』


俺は彼女の前で止まると、必死な思いで口を開いた。





「誤解っスから。さっきのあれは、あいつが勝手にしたことだから!」


何も言わずに黙る彼女に俺は言葉を続ける。



「……おれ、俺は優里先輩のことが今でも好きっスよ!先輩が俺のことを嫌いだとしても、俺は先輩が好きなんです」


――好きなんだ。

例え先輩が俺のことを嫌いだとしても、この気持ちは変わらない。


彼女に別れを告げられたあの日。

本当は言いたかった。


言えなかったのは、彼女に拒絶されることを恐れたから。

自分の気持を否定さることが怖くて、彼女のことを忘れようともした。


でも、そんのは無理だったんだ。

だから今度はちゃんと伝える。



もう、後悔したくないから。










『そんなこと言ったらダメ、だって』


少しの間の後、彼女が口にしたのはダメ、という言葉。

中庭で鉢合わせたあの時も、彼女は同じ言葉を口にしていた。



「どうして!どうしてダメなんスか?」

『……赤也には花園さんが居る、でしょう?』


俺が問えば、彼女は視線を横へと逸らす。

いつの頃からだろうか。彼女が俺の目を見て話をしてくれなくなったのは。



「舞華とは……別れるって決めました。俺には優里先輩しか見れないって気が付いたから」

『それでもダメだよ、もう無理だって……言ったよね?』


ダメだよ、と彼女はそう言って俺を拒む。

彼女は俺が気持ちを伝える度にその言葉を口にする。


ダメだ、と。無理だ、と彼女は言うけれど……それなら何故。

――何故、優里先輩はそんなに悲しそうで辛そうな表情をしているのか。今にでも泣き出してしまいそうな程に声を震わしているのか。



分からない。分からないけれど、そんな彼女の姿を見てやっぱり諦めることが出来ない、とそう思った。





「ダメとか無理って……何なんスか?先輩、ちゃんと見て。俺の目をちゃんと見て理由、話して下さいよ」


そう言って掴んだ彼女の左手。

久しぶりに触れた温度は暖かくて、そして懐かしくて。



『私が……いけないの。ごめん、ね』


小さな、本当に小さな声で呟かれた言葉はとても悲しげなものだった。



走り去る彼女。

俺は追いかけることも出来ずに俯き、消えてしまった彼女の温もりを握りしめた。










その悲しげな表情。

彼女が発したその言葉の意味。

俺には全てが分からない。


ただ、何となく。

何となくだけれど、彼女は俺に何かを隠しているんじゃないのかって……そう思った。


もしそうだとすれば、それは何なのか。










そこにある原因を俺は知りたい。





〔To Be Continued...〕

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