学校関係
□7屋上
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7屋上
風が荒ぶ
バサバサと長めの髪が揺れる
目を細めて、空を見上げる
ここは、どこよりも空に近い気がして、好きだった
「こんな所に居たのか。探しただろ」
振り返ると、扉の前にはリンドウさんがいた
「お仕事、終わったんですか?」
「おー」
朱い屋上
僕の隣までやって、煙草を取り出す
煙草の火と夕日の陽
朱い
「ここからの景色、好きなんです」
学校という閉じた世界
小さな世界を見下ろせる、唯一の場所
「みんなちっぽけで、空が近くて…」
フェンスを掴むと、ガシャンと耳障りな音が響いた
「安心するんです」
自分だけ隔離される錯覚
それが落ち着く
ここに来れば、僕を傷つける者から逃げられる
僕を傷つける世界から
「…だから、保健室にも教室にも居なかったら、ここに居ると思います」
この閉じた世界に
「一体どうしたんだ?お前さん、酷い顔してるぞ?」
「夢を…視たんです」
夢
あれは夢
「怖い生き物が沢山居て、僕はそいつを倒さなきゃいけない。けれど、僕は自由に動けて…自由に走り回れて…」
上手く動かない、この体と違って
そんな夢を視たら、僕はこの世界に歓迎されてないんじゃないのかとか思って…
あの夢の世界にこそ、僕は居るべきなんじゃないかって…
「一つ聞いていいか?」
「はい」
頭に乗せられた手
「その夢の中に、俺は居たか?」
目を見開く
そして笑った
淡く
「居ました」
「なら良しとしますか」
首を傾げる僕
フェンスを掴んだままの手に、大きな手が被せられる
「センナの世界に俺が居られれば、俺はそれでいい」
温かい手
ふと思う
僕もそれでいいんじゃないのかと
「僕も…リンドウさんが僕を必要としてくれるなら、それでいいです」
例え世界が僕を拒絶しようとも
朱い朱い屋上
小さな世界
二人笑う