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□お姫様のイタズラ
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お姫様のイタズラ



渡されたブレスは、懐かしい香りがして、好きだった
何となく、おまえの雰囲気と似ている、このブレスが


「珍しいですね。ジグさんがブレスをするなんて」
「…かもな」


横に座り、書類処理の手伝いをしていたレンが、いきなりそう言った
珍しい
確かに珍しいかもしれない
剣を振るう都合上、手にはあまりアクセサリーは付けなかったからな


「その紋章…カンタレラのものですか?」
「あぁ」


今は三人だけしかいない、滅びかけた一族
サルバトーレ家との因縁があるらしいのだが、おれ達は知らなかったし、今更とやかく言うつもりもない
互いにそれを知っているから、特に不快にはさせないと思ったんだが…


「気になるか?」
「いえ…。ただ…それは、ジグさんのもの…ですか?」
「そうじゃなかったら、身に着けていない」
「そうではなくて」


やや躊躇うように
迷うように


「誰かに貰った物…ではないですよね?」
「!」


ファズのことを思い出し、ついピクリと反応してしまう
それを目聡く見つけたレンは、何故か不機嫌になる


「ファズさんばかり狡いです。私が渡した指輪は、してくださらないじゃないですか」


レンからも指輪を貰ったが、正直言うと戦いには向いていない
抜けてしまうのではないかと、心配になるからだ
それに


「ファズは特別なんだ」
「それは…分かっていますけど」


今なら、そうはっきりと言える
特別
そう自覚したから


「分かっていますけど、嫌なんです!」
「は?…っレン!」


レンは素早くおれの腕からブレスを取り外す
そこは、流石女性
おれが抵抗する暇などなく、ブレスはレンの手へ


「明日、私とデートしてくださったら、返します」
「明日は…無理だな。先約がある。明後日じゃ、ダメなのか?」
「明日だから、意味があるんです」


そう言い切ったレン
どうしようかと、悩んでいた、その時


「待て!」


逃げられた
物凄く軽やかに
しかし、体力には自信がある
直ぐに捕まえられる
そう思って追いかけたのだが…


「残念ですね、ジグさん。私は持ってません」


全力で追いかけ、その上レンとバトり、ブレイク(手加減した)をかました時、レンはそう飄々と答えた
ご丁寧にも、両方を上げ、何もないことをアピールしながら


「私の仲間の誰かが持っています。ちなみに私は、エルクリアに渡しました」


そうだ、レンには仲間が居た
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