ロイエド
□ある時ある場所ある会話2
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「エドワード、そろそろ休憩しないかい?」
ロイは、無駄だと知りつつエドワードに声を掛ける。
読書をしている時のエドワードには、何を言っても聞こえないだろう。
そう、思ったのだが。
「な…に……」
予想外に返事が返って来た事に、僅かながら驚く。
しかし、今日はこれだけでは終わらなかった。
言葉を発しつつ此方を向くエドワードの…
「…っ!エドワードッ!!」
…エドワードの目には、今にも溢れ出しそうな程の水…もとい、涙が!!
一体どうしたんだ、との声も掛けられず、ロイはその場に立ち尽くす。
瞬時に泣いている理由が幾つか思い浮かぶが、どれもこれも決定打を欠く。
例えば、昨日の夕飯のエビフライを食べてしまった、とか、エドワードの洋服にコーヒーを零してしまった、とかその他諸々。
しかしそこまで考えて、ロイはふとある事実に気がつく。
――そもそもこの子は、人前で泣いた事が有っただろうか!?――
そんな事は…無い。
ということは、私を『特別な存在』として認めてくれているのか?
私の前でなら、泣いても良いと!?
と、ロイが暴走している間にも着々と涙は溜まっていったようで。
それが遂に、限界を超えて。
綺麗な雫が一つ、頬を伝う。
流石にこれ以上声を掛けないのはマズい、迷っている暇は無い、とロイは自分を叱咤する。
そして勇気を持って発した一言は、当たり障りのない言葉の羅列。
「どうしたんだ、エドワード。何か辛い事でもあったのかい?それとも、この本が怖かった?」
しかしエドワードは、ロイの言葉に一瞬驚いたように目を見開き。
次に、バツの悪そうな顔で。
「眠くってさ…。全然本に集中できねぇ…」
そしてエドワードは、
「…ふあぁぁぁ…」
大きな欠伸を一つ。