ロイエド


□とある真理のお話。
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「此処は、何処だ?」


ある日やって来た馬鹿な餓鬼に、俺は言ってやった。


『何処でもないさ』


「誰?」


『俺は“お前”だ』


餓鬼は、本当に餓鬼だった。


10歳ぐらいだろうか?


よくもまあこの歳でこんな所に来れたもんだ。


「母さんを返せ」


そうか、お前が求めたのは母親か。


暖かな温もりか。


優しい笑顔か。


だがな餓鬼、それは無理な相談だ。


お前の母親は、もう戻っては来ないんだから。


変わりに“いいもの”を見せてやろう。






その餓鬼は、とても強い眼差しをしていた。


その目から光を奪ってしまうのは……悲しい事だ。


だけど、“いいもの”を見た奴からは“通行料”を貰わないと。


だからと言って“いいもの”を見ないという選択は出来ないんだよ、如何なる人間も。


だからお前からも奪うよ、左足。











けれど、初めてだ。


奪うことが“悲しい”と思ったのは。














……


…………


………………!


俺は、お前から光を奪ってはいなかったのか。


嬉しいな。


……嬉しいな!?


俺はどうかしちまったのか。


一人の人間に入れ込んじまってる。


でも、顔から笑みは消えなかった。







『なんだ、また来たのか』







今度は弟の魂を取り戻しに来た餓鬼。


右手を奪った。


俺の中には、デカい罪悪感が残った。




 
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