ロイエド


□緑唄
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青々とした葉を風に揺らしながら佇む桜。

その根元にはスーツ姿の男性が一人。

寄り添いあうように座っていた。







緑唄







『…でな、この前枝に鳥の巣が出来たんだよ』

嬉しそうに語る少年の声。

その姿が見えないのが気になる。

が、相手の男性は気にも止めないようだ。

「それは良かった。枝から落とすんじゃないぞ」

『落とさねーよ!!』

いつもの風景。

1日で最も日差しの強くなるこの時間には、ほぼ毎日この風景を見ることができる。

一人の男性と一つの声。

男性の方は会社を抜け出して。

以前なら必ず探しにやって来た優秀な秘書だったが、男性がこの時間に会社を抜け出す事を許すと仕事の効率が倍近く上がる事が判明してからは、さぼりも黙認となっていた。

『あ、そうだ』

と、不意に少年の声が何かを思い出したかのように発せられる。

「何だい?」

『明日は俺、あんたが来ても気が付かねぇから』

話の流れが分からない男性。

「それは一体…?」

『明日は俺、寝てる』

「寝てる、って君ね…。というか、君も眠るのかい?」

『勿論。植物だって夜は寝るの。…明日は特別』

言葉を濁す少年の声。

「そうか…。では明後日来るとするよ」

そして、その事には全く触れない男性。

少年は明らかに何かを隠しているが、種族の違いから立ち入れない部分もあると割り切っているようだ。

『あー、うん。ありがと』



   
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