ロイエド


□二人は
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二人は




「はぁ…」


少年の口から溜め息が漏れたとき、国軍大佐の恋人は少年が提出した書類の確認をしていた。


「ふぅ…」


国軍大佐の恋人が書類の確認に区切りをつけたとき、少年は眉間にしわをよせて来客用ソファに沈んでいた。


「…なあ」

「…おい」


声をかけたのは、同時。


お互いに相手の不調に気が付いて。


しかし、まさか声が重なってしまうとは思わなかったらしく、先が続かない。


先にフリーズが解けたのは、年の功故か国軍大佐の恋人だった。


「何だね、鋼の?」


未だフリーズが解けない少年にむけて言葉を発する。


その声で、漸く少年も我に返ったようで。


「いやいやっ、大佐こそ何」


と。


再び落ちた静寂。


だがやはり、それを突き破ったのは国軍大佐の恋人だった。


「…鋼の、どうかしたのかい。先程から様子がおかしいぞ?」


それは問いではなく、確認。


ずっと前から気付いていたらしい。


すると少年の肩がピクリ、と跳ねた。


「き、気のせいじゃないか?それよりっ、人の事いう前に自分の面見てみろよ!!」


相変わらず言葉は動揺を隠せていない。


が、しかし。


「な、何を。…あぁ、私の顔に惚れ直したかっ!?」


今回は、いつも決してポーカーフェイスを崩さない国軍大佐の恋人にも動揺の色。


「何自惚れてんだ、この無能」


それを見て少し調子を戻したらしい少年が、何時ものように軽口を叩いた。








…はずだったのだが。








「……………む、のう」


「え?」


「…やはり…私は、無能なのか……」


国軍大佐は予想外にショックを受けていた。


驚いたのは少年の方。


いつもの軽口――程度にしか思っていなかった一言。


何時もと何も変わらない。


なのに、何故…?





「…あぁ」






そうだった。












雨が苦手なのは、俺だけじゃない。












「ロイ、悪かった………ったぁ…」


「エド!?」


立ち上がろうとしたのが悪かった。


左足の機械鎧との接合部が鈍く痛み、思わず声が漏れてしまう。


その声に我に返ったらしきロイ。


「大丈夫かね!?」


慌ててエドワードの側へ。


「…うん、慣れてる」


二人は並んでソファに座る。



















その時の言葉は誰のものか。





エドワードかロイか、はたまた二人か。




とにもかくにも、この言葉。











「似た者同士なんだな」












二人の気持ちを、結ぶ。











end.








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