ロイエド


□口は幸福の門
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口は幸福の門




今日は、久々に帰ってくるという彼の為に何が何でも定時に上がりたい。そして、無理矢理もぎ取った明日の有休を彼と共に過ごすのだ。


そんな野望を秘め、男は仕事をこなしていった。











そして、今。

男ことロイ・マスタングは、デパートの生鮮食品売り場にいた。




―――何故!?




ロイは、今自分がここにいる理由があまりよく分かっていなかった。





…確かに鋼のは、お昼を過ぎた頃に指令部にやってきた。そして、今日は必ず定時に上がるから夕食を一緒にどうだい、という誘いに快諾してくれた筈だ。

「あぁ、いいぜ」

と。


そして、

「何か食べたいものはあるか」

と聞けば、

「……今日はまだ店決めて無いのか」

そう呟き、

「よし大佐、デパート行くぞ」

…と。






何故話があのように流れたかが分からない。

『どこのレストランにするか?』
『デパート』
は明らかにおかしいだろう。



しかも先程からかごに入れられるのは、調理前の肉や野菜ばかり。

レストランに行かないにしても、せめてちゃんと食べられるものにして頂きたい。
少なくとも私は料理など出来ないのに、一体この食品達はどうするのだ。



「そう言えば大佐、なんか苦手なものとかあんの?」


家に置いていても腐ってしまうのに。


「おーい、大佐ー」
「…なんだね?」
「……その『最初から聞いていたよ』みたいにすんのやめろよ」
「そんなことは」
「嘘吐け、聞いてなかっただろ」


…まぁ否定はしない。
しかし鋼の、それは『俺をいつも見ていろ』ということ…。



ドカッ



「かっ………殴ることないだろう」
「なんか嫌な感じがした」
「鋭いな」
「………おい、ココナッツは固いんだぜ」
「…悪かった、鋼の」
「分かればいーんだよ、分かれば。…で?大佐はなんか苦手なものあんのかって言ってんの」


なんだ、そんな事か。


「そうだな…ピーマンはあまり好かんな」
「ぷっ…ピーマンて。子供かよ」
「仕方がないだろう。あの独特の苦味がどうにも」


しかし、なぜそんな事を。
まさかとは思うが…。


「意外すぎるんだけど」
「…鋼の、」
「なんだよ」
「君…、もしかして料理が作れるのか?」


まさかとは思うのだが。


「…何、俺が料理つくれんのがそんなに意外かよ」
「そ、そんなことは無いぞ」
「錬金術は台所から生まれたっつー説もあるんだ。料理ぐらい出来るんだよ」
「まぁ、確かにそうは言うがね。でも鋼のが料理…」
「文句あっか」
「いや…」


そんな意外な特技があったとは思わなくてね、驚いたよ。そうだな、出来ればフリルの付いたエプロンを着て作って欲しいのだが。ついでに、髪型もみつあみではなくポニーテールかツインテールに…。




「………あんた、よく一瞬でそこまで頭回るよな。ある意味で尊敬するぜ。だからさぁ、」



「?…何のことだ?」





「殴られて少しぐらい頭の回転遅くなっても問題ないよな?」










考えている事が全部口から出てたからさ。
そりゃあ殴りたくもなるよな。
だって、エプロンとかポニーテールとかツインテールとか………。

羞恥で死ぬ!!////







end.






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