ロイエド


□目立ちすぎるは運のつき。
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何の変鉄もないある日のこと。東部の辺境の町で、『鋼の錬金術師』の名は少々有名になっておりました。

「兄さん…なんか見られてる気がしない?」

『鋼の錬金術師』ことエドワード・エルリックと、弟アルフォンス。

「そうだな。殺気じゃない…けど、なんか気持ち悪い」

二人は、そんな悪意なき視線に少々戸惑っておりました。

少なからず有名な二人ですが、今のようにじとっとした居心地の悪い視線は感じたことがありません。

「…とりあえず、宿でも決めるか」
「そうだね」

そんな二人の意見は、当然すぐにまとまりました。




しかし、この決断が彼らの運命を大きく左右する事になるなど、この時の彼らには知る由もありませんでした。























二人はまとわりつくような視線に何とか耐え、漸く町に一つしかないという宿にたどり着きました。

「着いた…」

しかしこの時既に、歯車は最早止めることなど不可能な程、激しく廻っておりました。








「…おやいらっしゃい。二人かい?どちらかこの紙に名前を書いておくれ」
   
にこやかに…不自然な程にこやかに笑ったおかみさんは、笑顔を顔に張り付けたまま紙とペンを差し出します。

それを受け取ったのは、兄エドワード。
さらさらと名前を記入しました。








その瞬間。










「ーーーーーっ!!」

目の前のおかみさんは声にならない悲鳴をあげ、後ろで帳簿をつけていた若い女の人はペンを取り落としました。

「…え?何?」

驚き目を丸くするエドワード。
確かに彼女たちの反応には驚きが隠せません。

が、当の本人達はエドワードの反応などまるで気にも止めていないようでした。

それどころか、おかみさんはエドワード達を完璧に無視してどこかに電話をかけ始めてしまったのです。
とても切羽詰まった声で。

その様子を訝しんだエドワードが再び声をかけようと口を開いた瞬間。
後ろでペンを落としたまま放心していた若い女性が勢いよく立ち上がり、取って付けたような笑みを浮かべて口を開きました。
















「エルリック様、こちらへどうぞ」
























流されるように部屋に案内されたエルリック兄弟は、必死に考えていました。
   
「なんか僕らの扱い、逃走中の犯人を見つけました、みたいだよね」
「流石に指名手配されるようなことはしてないんだけど?」
「…それ本当?すっごい怪しいんだけど」
「アル!?」

少々(かなり)兄の扱いが酷いアルフォンスでした。

「けど…本当に何でだろ?」
「僕…ひとつ思い当たる所があるよ」
「え!?俺何にもやってないけど!?」

やっぱり兄の扱いが酷いアルフォンスです。

けれど、今日は様子が違うようでした。

「兄さんがやった訳じゃなくて…」
「は?じゃあ誰がやったんだよ?…てかアル?」
「僕が変なことするわけないだろ!…ほら、いるじゃん」





「?…………










    あ。」


































その僅か2日後、二人のよく知る黒髪の彼が部屋に押しかけて来ましたとさ。





おわり




   

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