アルエド
□風邪は引き始めが肝心なのですわよ。
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――あー、頭痛てぇな
いつものように旅をしていたエドワードがそんな事を思ったのは、数時間前。
微熱だろうしアルには黙っとくかと思ったのも同じ頃。
熱が上がりぶっ倒れたのが、ついさっき。
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(兄さん、やっぱり熱ある)
前を歩いている兄は、明らかにフラフラしていて足取りが危なっかしいのに、何でも無い様を装っていた。
(これは、言うしか無い…!)
今日は、朝から兄の様子がおかしかったのだ。
全体的に動きが鈍い、と言うべきだろうか。
だがそれだけでは、体温の分からないアルフォンスには判別出来ない。
だから少し様子を見たのだが…
(やっぱり、すぐに言うんだった…)
相当辛いのだろうか、普通に歩いているだけなのに少し息が上がっている。
旅続きで各地を歩き回る事が多い体力馬鹿のような兄が、だ。
それでも辛いと言わないのは、兄の威厳と言うより最早ただの意地だろう。
下手なことを言えば確実に拳が飛んでくるだろうが、アルフォンスは意を決した。
「兄さん、…熱、あるでしょ?」
途端、ピクリと肩が動いたエドワードは、ぎこちない動作でゆっくりと
振り向く。
――拳が飛んでこない…――
「そんなもん、無いに…」
決まってんだろ、と続いたであろう台詞はそこでピタリと途切れた。
今まで無理矢理忘れていた体調を意識したエドワードは、自分で思っていたより歩き続けて熱が上がっていたらしい。
それを自覚したとたん「あ、思ったより熱高いな」などと呑気な事を言いながら、ばったりと倒れた。
最も、地面に激突する前にアルフォンスが受け止めたのだが。