TOX2

□06:未来に憂う
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「美味しい・・・」


空腹は最大の調味料とか言ってごめんなさい
お腹いっぱいの時に食べても絶対おいしいです、これ


「ほんと?」

「うん、羨ましいくらい美味しい」

「そ、そう。今まで人に食べさせたことなかったから正直不安だったんだけど」


満面の笑みを浮かべながらの心からの感想にミラが照れている
可愛い
あ、そうだ


「ねぇミラ。今っていつ?」

「は?  の節だけど」

「(半年前・・・じゃあ半年しないとルドガー達が来ない?)

「行くところがないのなら空いてる家があるから使うといいわ」


作ってもらったスープを食べ終わって自分の考えに集中してたら、落ち込んでると思ったのかミラがそう提案してくれた
願ってもないのだけど・・・


「それじゃあ・・・お言葉に甘えて、よろしくお願いします」

「たまにで良いなら食事を作りに行ってあげても良いわよ。たまにだからね!!」

「わーい!スープも美味しいけど他の料理も食べてみたい!」

「・・・私が作るばかりじゃ不公平よね。ルウィナにも作ってもらおうかしら」


調子に乗って他のも食べてみたいと言ったのがいけなかったのか、自分まで作ることになってしまった
でもな・・・


「はい!ミラ!」

「なによ」

「私料理したことないです!」


そう、私、ルウィナは生まれてこの方料理をしたことがない
この世界に入るまでは作ってくれる人がいたし、入ってからはお父様が作っていた
え?お母様?食材調達専門でした


「はー・・・」


でもやろうと思えば大抵の事は出来ると思うんだ
という訳で


「料理、教えて?」


ほえっと笑いながら言ってみる
なんだかんだ言ってミラさんが面倒見がいいことは何となく分かった
だってほら、そっぽ向きながらも良いよって言ってくれたもん


「えへへ」

「貴女といると調子狂うわね・・・妹が出来たみたい」

「ミラみたいなお姉さんなら、欲しいかも。・・・そういえばミラは何であそこに居たの?」


お姉さんを送って来てって言ってたけど
降りてく途中に人なんて居なかったしなぁ
ミラはヒト、みたいだし


「毎日姉さんをあそこに送ってまた迎えに行ってるのよ。姉さんはあそこで何をしているのか私は知らないけど」

「うーん・・・」


あの私が目が覚めたところに来たのがミラのお姉さんだとしたら・・・
いずれは壊してしまわなきゃいけないんだよね
じゃないとルドガー達はここから出られないもの
でも自分が今まで生きてきた世界が消えるって言うのは耐えられるものじゃないよ


「ねぇ、ミラ」

「なによ」


食器の後片付けをして村長さんに挨拶をして空いているという家に案内してもらって
家の説明をしてくれてるミラに静かで、真剣な声色で問いかける
急に真剣になったルウィナに若干驚きながらも腕を組んで言葉の続きを待つ


「自分が今まで生きてきた世界が消えるとしたら、どうする?」

「私はこの世界を消さないためにアルクノアを壊滅させたのよ?それが全部無駄になるなんて、冗談じゃないわ」

「そう・・・」


そうだよね
リーゼ・マクシアの事はお父様から聞いていた話の中だけの事だったけど
緑豊かなこの世界を守ったミラにとっては自分のやり遂げたことが全部、記憶の中だけにあったことを残して消えてなくなるってことになるもんね
私だったら耐えられるのかな・・・


「・・・そろそろ姉さんを迎えに行く時間だわ」

「あ、私も行こうか?」

「遠慮しとく。今の姉さんは少し・・・」


悲しそうに眼を伏せるミラに何も言えなくなる
願わくば・・・





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