TOX2

□08:なつかしき
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ニ・アケリア参道から霊山を見上げるルウィナ
ルドガー達はミラを追って行ってしまった
私はルドガーに待っていろと言われていたのもあるけれど、進んでいきたくはなかった


「だって、ね」


きっとミラは大丈夫けど、大丈夫じゃない
一緒にいてあげられない私を許してね


「ルウィナさん!」

「ジュード?」

「一人で村の外に出たら危ないですよ」

「平気だよ。だって襲われないもん」


村から走ってきたらしいジュードを不思議そうな顔をしてみた後、心配してきたらしいことを知って、ほら、と周りを指差す
確かに近づけば襲い掛かって来る筈の魔物達はそんな様子はなく、むしろホーリィボトルを使った時みたいに逃げて行っている


「それでも、ルドガーにルウィナさんの事頼まれましたから・・・」

「うーん、じゃあ中に入ってるよ。ルドガー怒らせたら怖いから」

「え、ルドガーって怒るんですか?」

「怒るよー?怒らせたのは私じゃなくてユリウス兄さんなんだけどね。
 ところでジュード君、なんで一歳しか違わないのにさん付けで敬語なの?」

「え・・・?」


実は初めて話した時から気になってた
年上でも前に一緒に旅をしていたらしいローエンさんやアルヴィンさんにはタメ口で呼び捨てなのは百歩譲る
けれど、ルドガーだって呼び捨てなのに・・・


「仲間はずれ、いやだ」

「やだって・・・なんとなく、ルウィナさ・・ルウィナにはつけなきゃいけない気がして」

「なにそれ。あ、」


くるりと世界が回った
正史世界に、帰ってきたんだ
十年ぶり、かぁ




「あ、ミラ!」


戻ってきたルドガー達の後ろから下を見ながら着いてきているミラを見つけて少し大きめの声をかける
するとバッとこちらを見て何も言わずにツカツカ歩いてくる


「ご、ごめんね・・・?」

「・・・・」


教えてあげられなくて、という意味を込めて謝るルウィナにただ黙って抱きつくミラ
あのツンデレ?ミラがそんな行動に出て周りは驚いているが、ただルウィナはミラの背中を撫でていた


「それがマクスウェルの次元刀?」

「ああ」

「分史世界から持ち帰れたんだね・・・」


ルドガーの手の中にあった道標それはミュゼにあったもの
ルドガー達に必要な物、この世界に必要な物
ミラとまた会えたことは嬉しいけれど、ミラにとってはどうだかわからない
あのままあの世界と一緒に終わったほうが良かったのかもしれない


「へえ?懐かしい顔があるじゃないか」

「リドウ・・・」

「え?リドウ?」


抱きしめてくるミラをそのままに、ルドガーの背中越しに声のしたほうを見てみる
ルドガーがすっごく気まずそうに呼んだ名前に聞き覚えがあった


「は?お前ルウィナか・・・?」

「ハローハロー。大きくなったんだねー」

「お前はあんま成長しなかったんだな」

「「「は?」」」


ミラに抱きしめられたままのルウィナの頭に手を置いてしみじみとしているリドウと、その手をそのままにしてにこにこと笑っているルウィナ
分史世界にいたはずのルウィナ
ルウィナがリドウに言った、大きくなったんだね
リドウがルウィナに言った、あまり成長しなかった
まるで分史世界に居たルウィナにリドウがあったことがあるみたいな会話だった





cradle

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