漢字一文字100題

□006〜010
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「それ、アレじゃねぇ? ええーっと、なんつったっけな……あ、そうそう。過去夢ってヤツ」


「は? なんすかイキナリ」

 良哉りょうやは現在授業が始まる前に半日常化しつつあるオカルト研究部の部室で部長と話していた。

 彼自身はオカルトなんて端にも棒にも引っ掛からないくらい興味の無いもので、むしろそんなものには待ってるやつは『変なヤツ』というかなり偏った考えを持っている。

 ――の、くせに何故オカルト研究部こんなところにいるかというと、原材良哉の目の前にいて―――しかも傍迷惑なことに家同士が隣で父も母も仲が良くてお互いの妹と姉も仲が良くて、所謂幼馴染というものである―――良哉をこの部活に「部員一人しかいなくて廃部の危機なんだよぉぉぉぉ!!!!!!」などという自己中かつ大迷惑な理由で強制入部させてくれた葛西健一という一つ年上の部長のせいだ(ちなみに部員が二人しかいないため、必然的に良哉は副部長である)。

「いきなりって、お前が聞いてきたんだろーが。最近変な夢を見るって」

「言いましたけど、過去夢ってなんスか」

「過去夢って言うのは、文字通り「過去に起こったことの夢」だよ。昔に起こったことがそうやって夢に出てくるってこと」

「昔に起こったことって……、思いっきり俺が体験したことじゃないんスよ? 何で、んなモンを俺が見なきゃならねーんすか」

 失敗したな、これ。良哉は後悔していた。

 こういった「変なこと」に詳しいのは身近で健一だけだったから夢のことを話したのに、こんな変な答えが返ってくるくらいだったら、誰にも言わないほうがマシだった。

「だーかーらぁ……」

 健一が言葉を止めて、良哉をじっと見る。

「なんスか? 気持ち悪い」

「きもっ……、いや、もしかしてやっぱりそれってお前が体験した事じゃねーのって思って」

「は?」

 何言ってんだ、こいつ。さっき自分は体験して無いっつったろーが。

「そうじゃなくて、えーっと、お前の『前世』ってこと」


「……………は?」


「だから、お前はその夢のヤツの生まれ変わりってこと。相当昔の夢なんだろ? だったら、お前じゃなくてお前の前世が体験した事じゃねーのか」

 ……………どうしたらそんな突飛な発想が出来るのか、ぜひ知りたい。こいつの脳内勝ち割ったら、この変な思考回路が見えるのだろうか。9割以上本気で良哉は思った。

「ん? だとしたら、これは実に大変な事になるんじゃ……! おい、良哉! 早速改めて詳しくその夢の事を……」

 健一が振り返ったとき、良哉はもういなかった。

「………………良哉のバカァァァァァ!!!!!!」

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