漢字一文字100題

□006〜010
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(生まれ変わりとかねーだろ……)

 良哉は教室で頬杖を着きながら外を見ていた。ちょうどいい具合にグラウンドが見えるので、陸上部とかが器具の片づけをしているのが見える。

「良哉ぁ!!」

「断る」

「まだ何も言ってねぇよ!?」

「言わなくてもわかる。予習やってねぇのは自業自得だ」

 良哉は友人室井竜真の懇願を無情に切って捨てた。

「お願いします!! 今日当たるんです!! これで最後にしますからぁ!!」

 もはや土下座の勢いで頼み込む竜間に、ガン無視決め込む良哉。

「その台詞、何度目だ」

 日常態度とは裏腹に実はかなり成績のいい良哉はこうやって友人に頼られることが少なくない。そして素直にノートを貸すことは殆ど無いが。

 良哉曰く「一日1時間程度机に向かえば定テなんて乗り切れんだろ」とのこと。

 ちなみにこれを聞いた彼の友人(部長含む)は戦慄したという。基本、聞けば大体内容を覚え、多少の復習をすれば良哉にはそれで十分だ。

 何故、テスト前に必死にやっているのかが理解不能だ。

「自分でやれ。まだ時間あんだろ」

「良哉様ぁ!!!!!!」

 とうとう様付けになった。でも、無視。ここまで来ると血も涙も無い。

「20日発売のCD買ってやるから!!!!!!」

 ピクリ、と良哉の腕が動いた。竜真は悟る。―――これは脈アリ。

「ちゃんと初回限定版で買ってやるから!!!!」

 良哉は窓に目線を向けながら、自分の鞄を漁る。ノートの隅に何か書いて、それを竜真に手渡した。

 ノートを開くと書いてあった。―――20日出んのはジュナとロスだから。ジュナは5060円、ロスはDVD付きで7300円。忘れんなよ。

 竜間は己の浅はかさを嘆いた。

 それからしばらくして、始業のチャイムが鳴る。そのチャイムの10秒後辺りに担任が入ってきた。40代後半のやや筋肉質の男性。なかなか生徒に人気がある。

「今日は、連絡云々の前に、お前らに紹介したい奴がいる」

 その台詞に教室がざわついた。

「センセー、女子スか?」

「男子希望!!」

 そういや、転校生が来るって言う噂が流れてたっけっか……と、感慨深くも無く良哉は思う。

 無関心にクラスメイトの野次を聞いていたら、教卓側のドアが開いた。


 そこに現れた姿に絶句する。


 今時珍しい、腰まである純和風を表現する黒髪。征服から除く白磁の首元や腕や脚。ただ、絶句したのはそれだけではなかった。


(――嘘だろ!?)


 最近よく見る夢。あまりにもその姿かたちが似すぎていた。いや、むしろもう本人といって差し支えない。

「じゃあ、自己紹介を頼む」

 自己、紹介。その言葉に良哉は思い出していた。『彼女』の名前を。

 自分の声で紡いだ、『彼女』の名前。

「私は杉村―――」




『「桜」』




 ―――運命の歯車が再び回る瞬間であった。

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