小説

□君を騙して久しいが
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※P.1−680文字

 始まりはいつだったか

 最初はそんなつもりなんて無かったはず
 言い訳じみているけど本当に

 彼女に告げる 良いタイミングが
 いつかやってくる そう いつか

 そうしたら あっという間に時が流れて




 二人 向かい合う

 大きなお皿が一つ 二つ 三つ
 テーブルに並んで
 二人でおかずを分け合う


 色違いのどんぶり
 彼女が好きな水玉模様
 僕は青で 彼女は桃色


 二人 ごはんを頬張る


 同じところにごはん粒をつけて 笑った




 君を騙して久しいが

 ――さて いつ言えばいいのか
 そもそも 何と言えばいいのか


 まぁ いいか
 
 今日のおやつはマーマレードパウンドケーキ
 ちょっと苦くて ほんのりさわやか

 僕と彼女で大きなそれを半分こ


 二人 向かい合う


 白いお皿に切り分けられたパウンドケーキ
 二人でケーキを分け合う

 色違いのフォーク
 彼女が好きな水玉模様
 僕は青で 彼女は桃色



 食べるの大好き!
 な 僕らだが 僕と彼女は同じで違う

 僕は気にするカロリー
 でないとやっていけない 元・メタボ
 元・ね

 彼女は気にせずもぐもぐ
 彼女の胃袋が冷蔵庫に勝つこともしばしば
 

 今日の晩ご飯は回鍋肉に麻婆豆腐
 中華風春雨サラダつき





 君を騙して久しいが
 

 まぁ もう言う必要もないか

 くるみクッキーを食べながら思う
 二人でつくって 二人で分け合う
 いつもの 日曜日の午後

 温めたミルクはほんのり甘く
 くるみクッキーにぴったりです

 最後の一つに手を伸ばす

 お互いに止まる手
 交わる目線


 同じようにクッキーに手を伸ばして 笑った


 このまま 知られないままでもいいか

 「あ、言おう」
 そう思う時が来るまで でいいかな

 まさか 僕が元・メタボ少年だとは思わないだろう
 君を見てた 元・メタボ少年だとは



 君を騙して久しいが

 ほんの少しの罪悪と 悪戯心

 紅茶をいれながら
 いつ気付くかな なんて




End
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