どうしてこうなった。

□続プロローグ ー4年生編ー
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っていうか。



「誰だよ、こんなん作った奴」

「僕が昨日掘った」



独り言に返された、答え。
見上げれば、穴の淵でしゃがみ込んであたしを見てる男子生徒。

…作った奴が来そうな気は、していた。
本人も言ってるし、こいつがこの落とし穴を掘ったんだろう。



「そうかお前が犯人か。一発殴らせろ」

「おやまぁ、ご機嫌ななめだね」

「落とし穴落ちて機嫌良い奴が居るかよ。出るから手ぇ貸せ」

「それは落とし穴のトシ太郎。昨日の最高作なんだ」

「知るか。いいから今すぐあたしを引き上げろ」



噛み合ってない、妙な返答をする相手を睨み付ける。
奴は睨むあたしに、表情を変えないままで首を傾げた。

いや、だから手ぇ貸せよ。

少し待ってみるものの、動こうとしないそいつにイラついてきて、舌打ちする。
こうなりゃ、どうにかして自力で出るしかない。
そう判断したあたしが、落とし穴の淵に手をかけた時だった。


ストン、と。

小さい音を立て、背後に降り立つ何か。
前方に居た生徒が消えていて、まさかと思いつつ、振り返ったら。



「…何降りて来てんの」



案の定、例の男子生徒が落とし穴の中に降りて来ていた。
何やってんだこいつ。
4人は入れそうな広さの落とし穴だから、狭いとかそんなんは無い。
無い、けど―――…

こうも正面からじろじろ見られちゃ、居心地が悪い。
何がしたいんだ、こいつ。

無表情のまま見てくる奴に、思わず眉間にシワが寄る。
不快感あらわに見返した。
人を隅々までじっくり見ていたその目と、バチリ、と視線が合う。
途端に、奴はぶすっと膨れっ面になった。



「本当に覚えてないんだ」



不満そう、と言うよりは拗ねたように言われる。



「…何をだよ」

「前の事。僕らは覚えてるのに」

「前…?」



こいつと会った事あったか?
それに、【僕ら】って…こいつと誰の事だ?



「別に覚えてなくてもいいけど」

「いいのかよ」



思わずツッコミを入れると、奴は頷いて、いいんだと言った。



「覚えてても覚えてなくても、僕らが一緒なのは変わらないから」



碧先輩達みたいにね、と続ける。

昨日も聞いた名前が出て来て、ふと【僕ら】に入るだろう人物に思い至った。
同時に、確信する。

こいつ、平の知り合いだ。






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