どうしてこうなった。
□続プロローグ ー4年生編ー
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「お前、平の知り合いか」
確認するように聞くと、頷いた。
やっぱりか。
「僕は綾部喜八郎。滝と同じ、1年1組」
「……3組の本庄透だ」
「知ってる」
名乗られて名乗り返せば、滝に聞いた。と返された。
…あいつ、あたしの事言い触らしてるんじゃないよな?
思わず顔をしかめるあたしに、綾部が右手を差し出してきた。
「…何だよ」
「出ないの?」
「……出るけど…」
穴の外からならともかく、同じ穴の中から手を貸されても。
上から引っ張らせて、穴から出る手伝いをさせるつもりで「手を貸せ」と言ったんだ。
この状況で、どう手を貸すってんだ。
差し出された綾部の手を、不信感全開でじとりと見る。
「どうやって出るつもりだよ」
「こうやって。」
答えるが早いか、綾部に強く引っ張られた。
突然の事に驚いて抵抗も何も出来ないでいたあたしを、あっという間に担ぎ上げて。
綾部は軽々と跳び上がると落とし穴から脱出し―――何故かそのまま走り出す。
校舎裏から校庭、校庭から玄関、玄関から廊下…それに驚いた顔で道を譲る生徒達。
景色は次々と変わっていくが、目まぐるしく変わる状況に呆然としていた頭には一切入って来なかった。
いったい、どの先生だったろうか。
凄い勢いで駆ける綾部を見て、怒鳴って注意する先生が居た。
その怒鳴り声でハッとしたあたしが声を上げるのと、全く息の乱れてない綾部が教室のドアを開くのは、同時だった―――
プロローグ 4年生編
(離せ綾部、あたしは荷物じゃない)
(やだ。)
(離せっつってんだろうが!)
(居なくなるからやだ。)
(どういう理屈だてめぇ。殴るぞコラ)
(喜八郎!?お前、何をしているんだ!?)
(滝、お土産。透太郎捕まえた)
(あたしは透太郎じゃない!人違いだ、とっとと離せ!)
(すまない、喜八郎に悪気は無いのだ。気が済めば解放するだろうから、しばらく相手をしてやってくれないか)
(嫌に決まってんだろ。すでに女子の視線が痛ぇんだ、今すぐ解放しろ)
(やだ。ずっと一緒だよ。透太郎)
(だからあたしは透太郎じゃねぇっつってんだろー!!!)