どうしてこうなった。
□二度ある事は
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ふと、彼女の頬に添えていた手を離し、懐を探る勘右衛門。
やがて**の前に差し出されたその手の上に、数個の駄菓子。
「ほら。これでも食べて、今日はゆっくりしよう」
『はい、お饅頭。こんな雨なんだし、今日はもうゆっくりしてようよ』
『ほらほら、お団子でも食べてゆっくりしようよ』
ああ、そうだ。
【前】の時も、そうだった。
学園の時も、村の時も。
気を張って作業ばかりしているところに彼は現れ、菓子を出して来て。
言うのだ。
休め、ではなく、ゆっくりしよう、と。
更に思い出した記憶に、懐かしさが募る。
口角が上がるだけじゃなく、声までが上がるのを、**は止められなかった。
「ふふ…」
「**ちゃん?」
「同じ、ね」
同じ事、してる。
微笑んだ彼女に、言葉の意味するところに気付いて。
勘右衛門も笑った。
「じゃあ、今日もゆっくり出来ないのかも、ね?」
「そうね。
二度ある事は、三度あるって……」
少ない駄菓子を分け合って笑い合ってた、二人の会話が途切れる。
部屋の外。
廊下をバタバタと走る、慌ただしい音がだんだんと近付いてくる。
まさかとは思うが―――そう、目を瞬かせた二人が顔を見合わせると同時、ノックも無しにドアが荒々しく開かれた。
「勘右衛門ー!」
「…ハチ?」
「今さっき決まったんだけど、これからみんなで…」
「おーい、ハチー?最低限、ノックはしないと駄目なんじゃないの?」
「楓まで…
二人して、どうしたんだ?」
揃って現れた、友人達。
何事かと勘右衛門が問うと、彼らは笑って話し出した。
「朝からずっと、この雨だろ?」
「今日はあんまり仕事無いし、みんな暇だったみたいで、何故か食堂に大集合しちゃってさぁ」
「明日も暇になるし、せっかく集まったんだから、これからみんなでパーティーしようって話になったんだよ」
「来てないの、後は**と勘右衛門だけなんだよねぇ」
「三郎が、勘右衛門達も急ぎの仕事は無いはずだって言ってたから、呼びに来たんだ」
「食堂行こーよ。
みんな、準備始めちゃってるよー?」
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