どうしてこうなった。
□プロローグ
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昔から、何故かやたらと勘が良かった。
雨が降るなと思えば雨が降るし、嫌な予感がするなと思えば嫌な事が連発する。
勿論、反対に良い予感がした時は良い事尽くしだし、クジなんかは当たりばかり引く。
それが普通なんだと思ってたあたしは、当たり前に勘に頼ってたし、感じた事をそのまま口に出していた。
普通じゃないんだと気付いたのは、小学校低学年の最後くらい。
物凄く嫌な予感がしたあたしの提案で、あたし達家族は夜逃げ同然に引っ越した。
しばらくして、前に居た地方の週刊誌に載った【消えた驚異の予言少女】とか言う記事に、ショックを受けた。
あたしの普通は普通じゃなくて。
もはや予言と言える程の的中率を誇る勘。
生徒や先生、保護者達は恐れ、一部の大人が注目していた事実。
【現象を解明すれば】やら【その能力を使えば】と言う言葉に続く、仮説。
記事の内容全てが、衝撃的で。
予想されるあらゆる未来に恐怖した。
それからあたしは、今までのように人前で勘の話をしなくなった。
自分を、家族を、平穏な生活を。守るためには、そうしないといけないと判ったから。
人の輪には入らず、ひっそりと静かに生きていこう、と。
そう、決めたから。
どうしてこうなった。
ざわざわといつも通りに騒がしい室内で、あたしは並列された机のひとつに着席していた。
図書館から借りた、図書委員オススメの本に目を通すけど、全く集中出来ない。あたしの周りが煩過ぎて。
ぎゃあぎゃあと騒ぐそいつらは、本来なら居るはずのない存在。
そいつらに自分が囲まれている事に、再び自問する。
どうしてこうなった。
いや、原因は何となく判ってる。
判ってはいるんだけど…
いやもう、ほんとどうしてこうなった。
頭を抱えて嘆きたくなるのを堪えて、大きくため息をついた。
隣に座る、優しげな顔をした奴に「どうかした?」と聞かれたけど、騒ぐのを止めないその他数名に答える気が失せて、沈黙した。
どうしてこうなった
(答えたって意味は無い)
(だってあいつら、言ったとこで話聞いてないんだから)