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□風邪日和
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―…5月4日






…額が冷たくて気持ちいい


目を開けると、もう日は暮れて外は薄暗い

どうやら俺は寝過ぎたようだ


いつもなら池袋に行ってシズちゃんで遊んでるはずなのに今日は未だ布団の中


…それもそのはず

俺は風邪をひいた



一日布団の中でじっとしてるなんて退屈すぎる

かと言って起き上がろうとすると頭がグラグラするし


長時間寝ていたせいか喉も渇いた…



「あ、気分はどうですか?」



俺の思考を遮るように彼女の声が聞こえた

この部屋に居るはずのない彼女の声が



「…何でなまえが居るの?」

「ちょっと臨也さんに用事があって…
でも寝込んでたみたいだったので…」

「……まぁ、いいや
あのさ…水持ってきてくれない?」

「あっ、はい」



パタパタと足音が聞こえ、なまえが水を持ってきた

俺の背中を支え、起き上がらせると彼女は水を差し出す



「あぁ、ありがとう」



中の水を飲み干し、空になったコップを彼女に渡す

するとコップを受け取ったなまえは再びキッチンに向かい、暫くすると戻ってきた

その手には一人分の小さめな土鍋



「それ、何?」

「お粥作ったんです
食べてくれますか…?」



不安そうな顔をするなまえ

そんな彼女を見て俺は意地悪をしたくなってしまった



「どうしよっかなぁ…
今あんまり食欲ないんだけど…」



俺の言葉に彼女は、視線を下に落とす

そんな表情も俺には愛しくて堪らない



「でも…なまえが食べさせてくれるなら食べれるかもしれないよ」



そう言うとなまえは顔を上げた
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