長編

□04
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〜♪〜♪〜♪



「――っと!もう7時やんか!」



7時を知らせる音楽が町中に響き渡る。夏場でまだ明るいから気づかんかったわ。不覚や


「じゃあ、送ってくわ」


それを聞いて驚いている様子の名前


『いえ!そんなの悪いですよ!』



「別に気にせんでええよ」


『でも…!』


送ってもらうのが悪いと思っとるみたいで名前はどうにか俺を説得しようと色々言ってくる。でも俺は聞く耳を持たへん。こんな時間まで引き留めたのは俺やから送っていくのはあたりまえやし


『あっ…!』


名前の鞄をヒョイと取り上げて先に歩き出す


「鞄、取り返したかったらついて来るんやなっ!」


ノって来るかな?


少し歩いて後ろをチラッと見ると名前が頬を膨らませて俺を見とった


『もうっ!白石さんは強引すぎますっ』


「ぷっ」


初めて見る名前の表情につい吹き出してしもうた


『あー!何で笑うんですか!』


あ、ちょっと怒っとる。また初めて見る表情


「やって名前がかわええんやもん」


『……っ!?』


その一言で顔を紅くして俯いた。分かりやすいリアクションやなぁ…ホンマかわええわ


『っ…ほんと…意地悪です』


「んー?それは誉め言葉か?」


なんて言って頭をポンポン撫でる。自分でも先輩ぶっとるのが分かる


『〜〜っ!ばか白石さんっ!』


まだ顔が紅いで、なんて言ったらポカポカ叩いてきた。ホンマ退屈せんわ



――その後もそんな感じでふざけ合いながら歩いていった






『あ、もう駅に着いちゃいましたね…』


あ…何やあっちゅう間やったな。


「どうする?俺も電車乗ろか?」



電車に乗って名前の家の前まで送ることも考えたが、流石にプライバシーっちゅうもんもある。やから名前に尋ねてみる



『いえ、大丈夫です。それより…白石さんのお家ってこっから反対方向ですよね?送って頂いたりして…ごめんなさい…』



名前の顔が曇る。ホンマこの子は自分の事より人の事ばっかりや…

優しい子やな


「別にええて。それより……」


『それより?』


首をかしげる名前


「ごめんなさいより、ありがとうの方が嬉しいわ」


すると顔をパァッと晴らして笑顔で名前が答える



『はいっ!ありがとうございました!』


「ん、素直なええ子や」


頭を撫でたると顔を紅くしてはにかむ名前。その時、遠くから電車の音が聴こえた

「あー、多分そろそろ電車来るで」


『あ、そうですね。今日は本当にありがとうございました!』


深々と頭を下げられる。


「ははっ、何もそこまでせんでも」



『いえ、今日は本当に楽しかったですから!』



そう言うとニコッと名前が微笑んだ






ドキッ




一瞬胸が激しく高鳴った


…何や今の感覚?




『じゃ、さようならっ!』


名前が改札口の手前で大きく手を振っている


「お…おぉ!じゃあな!!」



負けじと大きく手を振り返す俺



…ホンマ幸せや





『…本当にありがとうございます』





幸せに浸っとった俺は




『…さようなら。白石さん』






彼女がそんなことを言ったのを





知るよしも無かった



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