長編

□06
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1つ目の病院。


頼む!此処であってくれ


「名字名前っちゅう中学生の患者は居ますかっ!?」



「は、はい…少々お待ちください」



受付の姉ちゃんに詰め寄る



はよ、早よしてやっ!



「――申し訳ありません。その患者さんはここには…」


それを聞くと礼も言わずに走り出す





もう1つの方か!





また走る。



ペース配分なんて考えずに全力で





ひたすら






「ぐっ…っはぁ、はぁ…はっ…っげほっ!」



流石に運動部っちゅうてもこれはキツイ



もう何キロ走ったやろか


服が肌にへばりついて気持ち悪い。汗が目に入って痛い。

口からは血の味がするし、息をする度に喉がくっついたみたいな感覚になって苦しい



もう休みたい。今必死に走っている足を休めてこのアスファルトに座り込めたらどれだけ幸せだろうか…



―けど…名前はもっと苦しいんや。俺のなんかとは比較にならない位に。


足を引きずりながらも走る





―さっきの病院を出てどんぐらいたったんやろか



やっともう一つの病院に着いた




「…はぁっはぁ…っここに!名字名前っちゅう患者はおるやろ!何号室や!?」



一息で全部言い切る。俺の態度に受付の姉ちゃんが怖がっとった



待合室におった人達が俺を見て何かヒソヒソと言っている。やけど今はそんな事気にしてられへん



「お、お友達でしょうか?」



「そや!何号室や!!」


早よ言ってくれ




「ご…517号室です。ですが―」



517号室か…!


話を最後まで聞かずに走り出した




「――あ、行っちゃった…。その患者さんはついさっき…」



あった!517号室や



ネームプレートには名字名前と、ちゃんと書いてある





ガチャッ





「名前!!」




まず一番最初に目に入ったのは名前に似た女性



「あ……」



見ただけで分かった



名前のオカンや



じゃあ、隣に居る男の人は名前のオトンか



それを一瞬で判断した



「えっと…君は蔵ノ介くん…?」



「あ、はい。」


何で名前を知っとるのかとちょっとビックリした



「名前が毎日話してるのよ。噂通り格好良いわね」


フフっと笑いながら。


でも…名前と最初会った頃と同じ、寂しそうな笑顔やった



すると名前のオトンは無言で部屋から出て行った


俺は軽く会釈する



「名前ね、毎日蔵ノ介君の話ばっかりでうるさいのよ」



さっき出ていった自分の旦那は無視して話を続ける名前のオカン。





ちゃう。



俺は今、此処で談笑しとる暇は無いんや




「あの…名前さんは?」



そう口を開くと笑顔が消えた




「……どこに居るんですか?」




名前のオカンは黙って自分の後ろの、カーテンに囲まれたそこを指差した







え……だってそこは…





そこからは…物音すらせえへんやんか




この部屋に入った時、俺は名前のオカンとオトン、二人以外の気配を感じんかった



やから俺は、名前が何処の部屋に居るか、を尋ねた





だって……今この部屋には俺と名前のオカン以外に














人の気配……無いやんか。



Next.END



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