長編

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白石さん泣いてた…もう会えないって…。それにさっきの会話をはぐらかしたのが凄く引っ掛かる。

無言で白石さんの後ろを歩く私の頭の中には疑問しか思い浮かばなかった。



『あ、あの…白石さん…』




無言と言う重い空気の中意を決して口を開く。自分でもなぜこんなに気になるのか分からないけど…。



「ん、なんやぁ?」



明るい雰囲気で返すがそれが本音でないことは分かる。後ろを振り向かない白石さんの背中に語り掛ける



『さっきの話なんですけど…』



そのセリフを言うと無意識なのか白石さんの歩くペースが若干上がった。何かあることは明白だ



『屋上で話した時、あの…なみだ…』


「あーなんの話してたんやったけ?」



笑いながら白石さんは自分の右腕を包帯の巻かれた左手でギュッと握りしめる。相変わらず歩くペースは速いまま




『さっき…泣いてた時…あれ何か変な気がしてならないんです』



人が泣いていた話を掘り返すなんて我ながらどうかしてるとは思う。根拠もないし自分でも分からないのだけど何だかとても気持ちわるい、何かスッキリしない気分だったから。



『あの時向けられてた目が…なんか…友達ってだけじゃないような気がして…』



本当に私達はただの"友達"と括れるような関係だったのだろうか?じゃあ他に何があるのか、と言われると言葉に詰まってしまうんだけど素直に思った事を言った。


だが帰ってきた答えは想像に反していた



「…もし友達やのうて…本当に友達以上の仲やったらどうするん?」



えっ?とまた言葉に詰まってしまった。白石さんの質問に対してもだがどこか彼の声が怒っているような悲しんでいるような、そんな声だったからだ。



「な、どうしようもないやろ?」




顔だけこちらを振り向き笑うその横顔は内心ではとても泣いているように見えた


『白石さんはっ「白石さんやないっ!」



私の言葉を遮る白石さんの怒鳴り声が廊下に響く。私は今すっごく驚いているんだと思う。こんなに優しそうな彼が怒鳴り声を上げるなんて…。

私は言葉を失った




「…呼び捨てで…蔵ってだけでええねん…」



その声は、その背中は見て分かるほどに震えていた。泣いていた。



「すまん…俺、先に行っとくわ…」




私はその震える後ろ姿に声をかける事も引き留めることもできない自分にただただ悔しさを覚えていた。



ふと視線を下げると白石さんが立っていた場所にはうっすらと涙の雫のような後があった



それを見た瞬間、胸の中の何かが砕けた気がした。





人を傷つけてばっか…もうこんな私なんて…




消えてしまえばイイ。






私の頬を一筋の涙が伝った。




<120818>


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