キタコレ展開

□番外編:よこたーん2
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俺は周りから、『お前は何を考えてんのか分かりづらい』と言われることが多い。

たしかに自分でもあまり感情を出さないようにしているし、そう言われてもしょうがないと思っていた。
別に誰に何を言われようが、どうだっていいし。

「……はぁ」

でも最近、高木のことを考えるとこう……顔がぼっと熱くなるんだ。

これ…治せない、かな。



キタコレ展開 番外編



「え!!!!?なっ治さなくていいそのままのキミでいて!!」

高木と付き合うようになってからしばらくして、俺達はひとつの決まりごとを作った。

それは“思ったことはきちんと言葉にすること”というもので、口数の少ない俺に対して高木が考えた打開策のようなものだった。


「……授業中とか、この前山下に笑われたんだ」

ぽつぽつと話す俺に食い入り気味でうんうんと頷く高木。

この前、たぶん無意識に高木のことを想ってぼーっとしていたら、斜め前の席である友人の山下に「ニヤけんなよ」と軽く笑われたことがあった。

言われた瞬間何のことか理解できなくてキョトンとする俺に「例の彼女か?」と楽しそうに訪ねてくる山下の頭に先生からのゲンコツが落ちたところで、あぁ今俺高木のこと考えてたんだなと気付いた。

「それ昨日の現国の時じゃね?うっわ何よこたんあの時俺のこと考えてたの?」

こう改まって問われると羞恥に心がみるみる支配されてしまう。

俯きながら僅かに頷けば、そっかそっかと嬉しそうに高木が笑った。

「やっべ顔ニヤける……つか俺だってしょっちゅう横田のこと考えてるよ、学校なんか早く終わってお前にチューしたいとか、さ」
「なっ……にを…」

反射的に高木を見上げれば、両手で頬を隠すようにしながらも真っ直ぐにこちらを向く目と視線がかち合う。

目が合った途端少しだけ細められた瞳はゆらゆらと揺れて…俺の気持ちを探っているようにも見えた。

「…す、ればいい」
「え?何を?」
「……なんでもない」
「うっそごめん茶化した!ねぇマジで?マジでいいの?俺真に受けていい?っつか横田がそんなこと言ってくれるとか思ってなかったからやべぇ嬉しい…っあ!今更ナシとか言うなよへこむから!」

ぺらぺらとよく回る口が可笑しくて自然と笑みが零れてしまう。

それに気付いた高木もつられるように微笑して、な?と再度確認するように首を傾げた。


学校でキスしたい、なんて。

俺だって何度考えたかしれない。
山下とかとじゃれあうようにふざける高木を見て嫉妬したことだってあるし、クラスメイトを疎ましく思うのなんて日常茶飯事だ。

…そんなこと本人には口が裂けても言わないけど。
こんな見苦しい気持ち、高木に知られたら呆れられるに決まってる。

「っなぁ横田、ココが何処だか分かってる?」
「…?」

思案に耽っていた意識がゆっくり引き戻されて、ニヤニヤと口角を上げる高木をじっと見つめる。

ここは教室で、今は放課後だ。

さっきまで山下達と一緒にだらだら喋ってたけど、彼らはバイトがあるからと帰ってしまったから今この場には俺達しか居ない。
だからあんな会話もできたんだけど。

そんなこと聞いて何なんだよ高木は…本当によく分からない…やつだ……

「…!」
「っあ、気付いた?」

考えながらやっと高木が言わんとしていたことが分かった俺は、一気に恥ずかしくなって顔を伏せる。

だって…高木…今、ここで、学校で、キスしようと思っ……

「…っ!」

机を挟む形で向かい合って座っていた俺達。

高木が腰を上げてこちらに身体ごと顔を覗かせるように前のめりになるから……俺もちらちらと周りを見回して、わずかに顔を前に出した。





窓から夕日の赤い陽射しが差し込んでいる。
最終下校時間を知らせるチャイムが鳴り響く夕方の誰もいない教室に、机を挟んで重なる二人の影が濃く伸びていることは、俺達しか知らない。



---fin---



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