そして気付けば時刻は7時過ぎ――そう!みんな楽しみキャッキャウフフなお風呂の時間なのだ!
「ややややややぶぇ…(横田のすっぽんぽんが見れる…!)」
「高木、どした?」
「あ、いやいや何でもない!」
「そう?」
「それより早く大浴場行こうぜ!1番乗りしてやんよおぉ!」
「なんかウキウキしてるね」
「風 呂 っ て!テンション上がるじゃーん!な?な?」
「う、うん…」
このテンションの雲泥の差!若干引いてる横田!イイ!
大浴場じゃなくて大欲情なんだぜ横田くーん!
* * *
「高木、どした」
広々とした大浴場の更衣室。
本気で走って向かった俺達は本当に1番乗りだったらしく、今この更衣室には俺と横田の二人だけしかいない。
案の定下半身がこの迫り来る期待から大爆発してしまった訳で…。
パンツどころかズボンも脱げなくなって呆然と立ち尽くしてる、と。
「おい、高木?」
「あ、いや、ちょ、先入ってろよ!俺もすぐ行くし!しゃーねーから一番風呂はお前に譲ってやんよ」
「…早く来てよ」
早くキテよ…?うわあああ一気に脳内変換して更に下半身を煽ることになってしまったやばいコレまじでやばい助けて。
漸く俺の息子も落ち着きを見せてくれ、やっとこさ無事に服を脱いで浴場への楽園の扉を開けた。
と、真っ先に目に入ったのは横田のチン…ではなく、もう既に湯舟に浸かって気持ち良さそうに目を閉じ、ほかほかしている横田の顔だった。
「おま、中入るの早くね?」
「きもちー…」
お湯を両手で掬って顔にぱしゃんとかけ、「ぷあー…」とか言ってる横田がもうツボ過ぎてやばい。
そんじゃ俺も早いとこ湯舟入って二人だけのお風呂タイムを楽しみたいところ…
「わー風呂だーっ」「ひゃっほーーい」「アレ?誰かいんぞ」「おいおい誰だよはえーなー」「ひゃっほーーい」
うわあー…。
タイミング良いというか悪いというか悪いというか、更衣室の方からクラスの奴らの馬鹿丸出しの声がしてきやがった。
みんなどんだけテンション高いんだよ。(別の意味で)分かるけども!
「みんな来たね」
「だな、一気にうるさくなるな」
「残念」
え?今残念って言った?
それってもしかして「俺と二人きりのお風呂タイムを邪魔されて残念」ってこと?
「なぁ横田」
その真偽を確かめるため、ふと隣にいる横田へ体ごと向きを変える。
すると、
――横田は見事にぶくぶくと湯舟の中に沈んでいく最中でした。
「よこたあああぁぁぁ!!」
* * *
時刻は只今夜の9時30分過ぎ。あと30分で消灯時間になる訳だが、俺は今何をしているかというと――
「おーい大丈夫かー…?」
「うー…たかぎぃ」
風呂場で湯あたりをして倒れた横田を何とか抱えて部屋まで戻り(これがめちゃめちゃ興奮し…ゴホンゴホン。色々大変だった)、早々に布団を敷いてそこに寝かせ、たまたま持ち合わせていたうちわでひたすらに扇いでやっている。
横田は、時折うぅ〜と唸りながら眉をしかめて何だか辛そうだ。どうにか楽にしてやりたい。
ああ、俺が代わってやれたらいいのに。早くよくなれ、横田。
うー…ん。苦しそうに俺の名を呼ぶ横田のその表情がなんつーかこう、堪らなく色っぽい。
もっと名前を呼んで、もっと頼って欲しい。そしてあわよくば、色んな意味で介抱してやりたい。主に下半身とか。
よくよく考えてみればこの部屋には明日の朝まで俺達二人しかいない訳で、消灯してしまえば見回りの先生とかも廊下に居るだろうし、他の奴らが遊びに来たりすることもない。
ましてや横田が湯あたりをしたことは、俺が大騒ぎしたおかげで大体の生徒に知れ渡ってるから「今頃あいつら大人しく寝てんだろうな、邪魔したら悪いだろ」とか思われてるに違いない。
いやいや、なんかもうめちゃめちゃ俺邪(よこしま)なことしか考えてない奴みたいだけど、実際すげー心配してるのよ?これでも。そして理性を保つのに必死。
そんなこんなで、横田をうちわで扇いでいる内にいつの間にか消灯時間が来てしまった。
ドンドンと乱暴に部屋のドアをノックされる音が聞こえ、「はいはいはーい」と返事をしながら立ち上がってドアを開ける。
担任から「もう消灯時間だから早く寝ろよ、横田は大丈夫かしっかり看てやれ」という旨を伝えられ、二つ返事で了承しながらゆっくりドアを閉めた。
因みに、カギもしっかりかけさせていただいた。
担任曰く「最近は物騒だからな」とのことで、部屋のカギを掛ける決まりになっているみたいだ。
ま、そりゃそうだわな。つか先生に言われずともかけてただろう、うん。邪魔が入るのだけは勘弁だからな本当。