キタコレ展開

□番外編:よこたのターン
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それから半年くらいした初夏の頃。

「ねぇねぇよこたーん!」
「…?」

休み時間ぼーっと窓の外を眺めていたら、隣に居る高木をそこらに追いやる形でどかっと山下が隣に座ってきた。

後ろでわんわん文句を垂れる高木もお構いなしに、山下は俺に向かって両手を合わせた。

「あのさ〜お願いがあるんだけど〜…」
「やだ」
「なっ…!冷たい!何で!」
「……何か嫌な予感がするから」

はっはーん全く贅沢なヤツめ〜!と何故か調子に乗り出した山下をほっといて、後ろにいる高木に目配せをする。

「ほらほら山下!横田がお怒りだ!下がれ下がれぃ!」
「なんだお前は、よこたんの下部か?」
「はっは、下僕と呼びたまえ〜!」

二人がいつも繰り広げるコントみたいな会話を、机に肘を付いて安らかに眺める。

時折ふっと高木と目が合うと襲ってくる胸の苦しみを、誰にも知られないようにしながら。


――こんなこと、駄目だから。

高木はとってもとってもいい奴だ。
俺の一番の友達で、それ以上でもそれ以下でもないんだ。

そう必死に自分に言い聞かせて、どっと湧く教室の騒ぎを人事のように無心で聞いていた。


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