サ ク ラ サ ケ !
□やっと…
1ページ/2ページ
『ぬぅ……む、難しい…』
慣れない包丁に苦戦する私。
大根がまともに切れない。
この包丁切りにくいよ…!
『んー…困った。…って、わわわっ…!』
包丁を片手に悩んでいると、背中と右手に温もりを感じた。
『は、一君?あの…?』
「これはこう握れ。そして、こうやって…」
一君は私を後ろからすっぽりと包み、右手に自分の手を添えて大根を切っていく。
ちょっと…これはまずいよ…!
頬に熱が集中するのがよくわかる。
一君は丁寧に教えてくれているけど、こちらはそれどころじゃない。
私、すっごいドキドキしてる。
「萌恵、聞いているか?」
『…………』
「萌恵?」
『は、一君…』
「何だ。質問があるのならするといい」
『ち、近くて…その…緊張しています…です…』
「……………!す、すまない…!」
一君はしばらく考える素振りを見せ、はっとした様子で、私から離れる。
無自覚だったのか。
この天然タラシめ…!
『…あれ?一君って左利きじゃなかったっけ?』
「あぁ、右でも切れる」
プロだ…。
そんなこんなで料理を作っていくと、パタパタと足音が聞こえてきた。