TOA
□君がいて
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君がいて
真昼のけだるい空気が部屋を満たす。
暖かな光。
二人で住むには充分な広さのリビング。窓際に白い二人掛けのソファーが置いてある。
その上には、オレンジ掛かった赤毛の短髪の少年が、怠そうに脚を放り出して座っている。
目線は虚空を泳いで、他人からは何を考えているのか伺い知れない。
「約束してたのにな…」
ぽつりとこぼされた独り言には、残念さが多分に含まれていた。
今日、本当はアッシュと出掛ける予定だった。
だけど急にアッシュに用事が出来て行ってしまったのだ。
(行ってくる…)
ぶっきらぼうにそう言うと出て行った双子の兄。
もう少し謝罪の一言でも言ってくれても良さそうなものだけど、生憎そういう性格ではないと重々承知している。